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トレ「オンユアマークス……」
トレ「スタート！」
トレーナーの合図で2人同時に駆け出す。先行策を取る先輩は、私より少し前に位置取るはずだ。
瞬発力抜群な先輩に追いつくには……体力を温存して、先輩より長くスパートをかける！
『っ、速い…！』
前を行く先輩は、みるみるうちに私との距離を離していく。
基準速度がこれなら、スパートをかけたときに出る最高速度は…
先輩の才能を目の当たりにして、体がゾクゾクと震える。
でも、負けてられない。経験の差や才能の差なんて言い訳に過ぎない。
自らを鼓舞するように言い聞かせて、速度を上げた。
・・・
第3コーナーを回る。先輩はまだ基準速度を保っている。
私が仕掛けるタイミングを窺っているのだろう。
いつもなら最終コーナー付近で仕掛けるけれど…今回はここ！
先輩との距離を詰めるようにロングスパートをかける。
いつもより少し速く走ってはいるけれど、体力は十分温存できている。
タ「！」
私が上がってくるのを察した先輩が、わずかに速度を上げた。
私は速度こそ先輩に劣るけれど、スタミナは負けず劣らずの筈だ。
最終コーナーに差し掛かる。
ラストスパート。強く踏み込み、姿勢を低くして、全速力で駆け抜ける。
先輩との差は順調に縮んでる、これなら先輩を追い越せる…！
『！？』
油断していた私の隣で、光が瞬いた。
光、いや、それよりも速い粒子…タキオン先輩が、スパートをかけたのだ。
体力をかなり消耗していた筈なのに、どこからあの速度を出す元気が沸いて出たのだろうか。
タキオン先輩の天性のスピードに未熟な私が叶うはずもなく、1バ身、2バ身…と距離は開いていく。
私が負けた、あのレースと同じだ。
気付いて、拳を強く握りしめる。
嫌だ。負けたくない。負けたくない。負けるもんか。負けない。……勝ちたい！！
これでもかと脚を回転させ、負けたくないと強く願ったそのとき。
『なに、これ…！』
暗いコースが極彩色に輝き、時間が止まったように、一切の音が無くなった。
きらきらとまばゆい世界で私の足音だけが響いて、どこまでも走っていけそうな感覚に陥る。
『すごい…』
持久力が回復したかのように、翼が生えたかのように、脚が軽い。これなら…！
次に続きます
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作者名：winter | 作成日時：2022年8月13日 2時
