超光速のプリンセスに溺れる【ウマ娘】 (ページ25)

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どれくらい時間が経ったか分からない。
先輩は、ライブに出なければいけない私を引き止めるようなことはしないだろうから、実際は数分、いや、数十秒だろう。
でも、私にはその何十倍もの長さに思えた。

『あの、先輩…』
声をかけると、解放され、手も離された。紅茶の香りと心地良いぬくもりの余韻に寂しさを覚える。

タ「緊張が和らぐと思ってやってみたのだが…クク、そんな顔ではステージに立てないかな？」

悪戯っぽく目を細める先輩の、朱い瞳に映った私の顔もまた、同じような色に染まっていた。
熱のこもる顔に、冷えた指先を当てる。

『もう…こういうことは好きな人にしかしちゃだめだと…』
「Aさん？大丈夫そうですかー？」
『い、今行きます…！すみません！』

先輩から私の望む返答が返ってくることを期待したが、その前に、スタッフさんの声に遮られた。

『…先輩、今日は私だけを見ててくださいね！』
返事は待たず、廊下へ駆け出した。

・・・

私の先輩への気持ちは、年上に対する憧れなんかじゃないのだと自覚した。手を繋いだときの多幸感も、抱き竦められたときのドキドキも、1つの切っ掛け…雪片から始まっている。

その雪片はきっと…恋と云うのだろう。