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side;Tachyon
Aくんがシャワー室へ向かって間もなく、彼女のトレーナーが帰ってきた。
トレ「あれ、タキオンちゃんまだいたの？Aちゃんとさっきすれ違ったから、もう帰っちゃったのかと思ったよ」
『私も帰ろうかと思っていたのだけれど、お姫様のご所望でね』
トレ「何それ、Aちゃん絶対可愛かったじゃない…」
『ふふ…あんなに甘えん坊な彼女を見れるのは私の特権だからねぇ』
トレ「彼氏面…！あなたたち、付き合ってないの？」
『残念ながら、君の望むような関係ではないよ』
トレ「…ふーん？」
トレ「今日のライブでつけるリップ、どっちの方がいいと思う？」
『ふぅン…彼女の肌色にはこれが似合うんじゃないかい？』
言って、ベビーピンクのリップを指さす。
トレ「やっぱりそうよね」
彼女は満足気に微笑み、てきぱきとメイク道具の準備をしだした。
ガチャ
扉が開き、湿った芦毛が覗く。
『おかえり』
トレ「おかえり〜。あれ、髪の毛湿ってるよ。ちゃんと乾かした？」
A「ただいまです。急いで帰ってきたから、ドライヤーちゃんとできてなかったかも…」
トレ「タキオンちゃんがいて嬉しいのは分かるけど、ちゃんと乾かさないと傷んじゃうよ」
A「も、もう！トレーナー！」
トレ「ごめんごめん」
2人のやり取りに、顔が綻ぶ。
トレーナーの前でのAくんは、母親に甘える娘のように無邪気な顔をする。
『Aくん。髪を乾かしてあげるから、こっちへおいで』
A「良いんですか？」
『ああ。レースを頑張ったお姫様には、たっぷり労ってあげないとだね』
A「じゃあ、お言葉に甘えて…」
控え室に備え付けられてあるドライヤーを手に取る。おずおずと椅子に座った彼女の髪を軽く梳かし、オイルをつけて、ドライヤーをあてた。
彼女は他人に髪を触られるのが好きなようで、うっとりとした顔で尻尾を振っている。
・・・
『さあ、乾いたよ』
A「さらさら…！先輩、ありがとうございます」
トレ「Aちゃん、メイクもするから座っててね」
A「はい」
再び椅子に座り、メイクをしてもらう彼女の方を見遣る。
『Aくんはメイク好きだから、ライブ用のメイクも自分でするのかと思っていたよ』
トレ「普段は自分でしてるんだけどね。今日はほら、タキオンちゃんが来てるから」
『…へぇ』
次に続きます
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作者名：winter | 作成日時：2022年8月13日 2時
