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タ「せっかくだし君の踊りでも見て行こうかな」
『！？』
〜♪
鏡の前で踊る私、それを壁際にちょこんと座って興味津々といった様子で眺めるタキオン先輩。
恥ずかしい…。振り付け間違えてないかな？リズムとか、ずれてないかな？
心臓がどくんどくんと大きく脈打つ。リズムが分からなくなりそう。
・・・
『ふぅ…。あの、気になるところとか無かったですか？』
トレーナーが持参したペンライトを握らされ、楽しそうにニマニマとしている先輩に感想を求める。
タ「実に君らしい踊りだったよ。気をつけるべきポイントをしっかり押さえていて、お手本のようだ」
お手本みたい。私が何回も何回も言われてきた言葉だ。
『ありがとうございます。でも、なんだか…無個性じゃないですか？私、もっとひとの印象に残るようなダンスがしたくて…お手本通りじゃ満足できなくて…』
せっかく褒めてくれたのにこんなこと言ったら、嫌われちゃうかな。自分の発言に後悔し、俯く。
タ「そうかい？君の誠実で器用なところは、立派な個性だと思うけれどね」
『…！』
どきっとした。
私は真面目で、大抵のことは満足にできる。
けれど、その器用さは所謂主人公気質とかそういうものではなくて、特にダンスのような個性勝負となれば、いつもキラキラで目立つ娘に負けてしまうのだ。
個性がある。私が1番求めていた言葉をいとも容易くくれた先輩に感動して、胸が高鳴る。
タ「そうだなあ、でも」
『！』
先輩が私の背後に立ち、私の両腕を優しく掴む。
タ「君は比較的小柄だから、ここの振り付けはこんな感じで思い切って大きくしたら、より個性的になるんじゃないかい？」
私の欲しかった褒め言葉に加えて、アドバイスまでくれるなんて。この先輩はどこまで私を喜ばせれば気が済むのだろう。
『ありがとうございます…！確かに、結構大きめに動いてもうまく馴染みますね！』
タ「ふふ、それから…」
他にもアドバイスがあるみたいで、分かりやすいようにと私の体を動かしてみせてくれる。その優しさを嬉しく思う半面、距離の近さにどきどきする。
すぐ近くから聞こえる先輩の落ち着いた声と、首筋にかかるあたたかい息に、心臓がはちきれそうなぐらい脈打って、気絶しそうだ。
爆発するんじゃないかと思うぐらい熱がどんどん集まる顔を先輩から逸らし、今にも遠のきそうな意識を必死で留めた。
次に続きます
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作者名：winter | 作成日時：2022年8月13日 2時
