その女、IQ3にして天才呪術師【呪術廻戦】 (ページ10)

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方向音痴も天性の才能ページ10

「んあー、暇だにゃー」

少女の呟きとため息が、歩けば軋む寮に充満している静寂を切り裂く。
今日は高校生活最初の休日。
そんな素晴らしき記念の日、Aは少し硬い英国産のソファに身を沈め、怠惰を貪っていた。

「皆して任務任務って嫌になっちゃうね。誰かあたしのために有給休暇とってくれる人はおらんかー？！」

心からの叫びも虚しく、再び静寂が広がった。
既に実力を認められている五条や夏油は須く、
反転術式が使える家入とAの同期は良く言えば優秀。
悪く言えば異質でアブノーマル。

呪術師はイカれていないと、と誰かが言ったが、それを体現したような彼ら。
イカれているかどうかで言えば、この少女も大概で、右に出る者はいない程であるが。

陽が西に傾き始めた頃、少女は漸く立ち上がり、真新しいローファーで、古びた木目の板を叩く。

閑古鳥が鳴いた。

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「どこだーーー！？？？ここーーー！！！」

あれから３０分程経っただろうか。
山奥に見えた高専から少し歩けば、そこには街と呼べる風景が広がっていた。

「もー、昔はもっと田舎だったのに、こんなたっかーいマンションなんて建てちゃってサ。やんなっちゃうね」

歩道のど真ん中で叫ぶ少女に道行く人は奇怪な目を向け足早に立ち去る。

何か目的があって山を下りたわけでも、土地勘があるわけでもない。ついでに帰り道も覚えてない。
紅樓A、高校一年生、完全なる迷子です。

「オマエ、そこで何してんの？」

喧騒の中で唯一、聞き覚えのある声に出会った。
衝動で振り向くと、全てを見透す蒼い目が、目立つ白が、己を見下ろしていた。

ああ、これほどまでに嬉しくて、安堵して、涙がこぼれ落ちそうになったことはあったか。

「サッちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんんんんん！！！」

「ぐはぁっ！？オイ！！離れろバカ！！」

「アンタほんと良い男だよ…！！嫁に貰いたいくらいだよ！！！」

ガバッとラグビーのタックルが如く、五条に飛びつく。

このままじゃ『紅樓Aによる紅樓Aのための迷子！？えすけーぷ作戦〜呪霊も添えて〜』が遂行されるところだった、と理解不能な作戦名？を唱え、Aは脱力した。

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子安さんに乾杯。