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5.私の中の誰か ページ6

「...父親が、呪いとして生きてる?」
「そう。いわば、「呪いの胎児」。
縛りから脱してからこの子は突然成長し始め、私も自覚した。」


この子。我が子のように君は言った。
もう自分は受け入れているのだと、私に明言したのだ。


「悟は始めから気づいてたって。でも成長はしてなかったから黙ってくれてたの。」


橙色に染まった校舎は神秘的で物悲しくて、いつも見る君がどこか遠い存在に思えた。
君の熱い眼差しは、ふとした時に澄むことがある。その時だけ、君は誰とも目が合わない。例え2人が見つめ合っていても。
君は今、何を見ているんだ?


「これは、縛りを破った罰。
この呪いはゆっくりと私の体を蝕んで、最後には命を吸い取ると思う…もの〇け姫みたいに?」
「つまらないよ、A」


どうしてそう、淡々と喋れるのだろうか。死が目の前にあるというのに。

歩みを止めた君に近づく。いつもの君を取り返そうと、行き場を失った手がその顔に触れようとした。ぐっと拳に力を入れて耐える。


「きっと打開策があるさ」
「ううん。打開策はない。冥先輩に言われたの。
命を犠牲にした縛りは強力だから、その呪いを祓うことは基本的に不可能だって。それにお父さん、呪詛師だったし」


涼んだそよ風が袖を通って肌を撫でる。
君と歩く廊下は確かに甘い香りが鼻腔を掠めたはずなのに、溶かしきれない現実がその風に忍んで、2人の心をかっ切った。
私はとうとう歯止めが効かず、その体を抱きしめた。強く、強く。


「す、傑!」
「つまらなすぎて、寒くて」


君の温度を感じさせて。








ーーー2週間前。⬛︎⬛︎が八重の病室へ訪れた。


「良かった〜!もう歩けるね」


八重は彼女を警戒していた。
父の罪を隠蔽してくれたり、こうして命を助けてくれた恩人ではあるものの、彼女には何か…裏を感じるのだ。


「もし君が記憶を取り戻した反動で、"友達を殺した罪を償う"とか馬鹿なこと言うなら笑い転げてたよ。」


八重の思考が止まる。今、この人はなんて言った?


「…馬鹿ですって?」
「あのさあ。呪術師が人を殺すことはザラにあるってこと、Aは分かってるよね?でも、()は分かってない。というより実感が湧かないんだ。」
「は?」
「もしそんな死を望むなら、()だって死んでしまう」
「さっきから誰に向かって話してるんです?呪いの胎児ですか?」
「ううん。私はいつも2人に喋っているよ」
「…はあ?」




6.生きたい→←4.呪い



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設定タグ:呪術廻戦 , 夏油傑 , SF   
作品ジャンル:恋愛
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tomishiro(プロフ) - 佝僂さん» はわー!?とっても嬉しいです!おかげで頑張れそうです!ありがとうございます! (2022年7月13日 11時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
佝僂(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!更新頑張ってください!! (2022年7月13日 10時) (レス) @page12 id: 1c770a8388 (このIDを非表示/違反報告)
tomishiro(プロフ) - ぜひ評価の方もよろしくお願い致します! (2022年7月13日 9時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とみしろ | 作成日時:2022年7月7日 20時

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