48. 別れ ページ49
傑が呪詛師になったと聞かされておよそ1年。
硝子と悟から、傑と直接面会したという噂を聞いた。
でも、私は傑と会うことは無かった。
その日はいつも通り教室に入ろうと務めたが…悟の顔を見たら、装うなんてできなかった。
現在私は任務で新横浜に来ており、駅前の地図の看板を背にして携帯を弄っている。
任務先は桜木町だったが、呪霊がここまで逃げたので追いかけて来たのだ。
そのため車で現地待機してくれた補助監督さんを置いていってしまい、謝罪メールを送信した。
疲れたなあ、なんて考えていたら。
「久しぶり」
後ろから聞こえたその声は、かつて好きだった_____
「…………………」
振り返ることが出来ない。舌が喉に張り付いて声が出ない。
だが背中の看板越しに伝わる呪力は、気配は、空気は、夏油傑だ。
「話したくないなら話さなくていい。私のことは聞いたよね。全部本当だよ。」
私の状況を察したのか、男は丁寧に今までの経緯を説明した。人を殺し、子供を救い、親を捨て、家族を持ったと。
「この怒りを無駄にしたくない。これが私の生きる術だ」
その声に震えはない。寧ろ、鋭さを持つ決意が私の胸を引き裂いた。傷口がただ冷たい。私は震えた喉で必死に声を絞り出す。
「……生きる……術?仲間を捨てて、見知らぬ人を満足するまで殺して、それが傑の人生なの?」
「そうだよ」
「ふざけんな!!!満足するまで非術師誑かして惨殺して金啜ってるだけの奴が、生きる術とかほざいてんじゃねえよ!!」
沸点を超えればもう止まらない。
心臓が私を責め立て、もっともっとと震える唇が動く。
「あとお前さあ、私に星漿体事件のこと隠してたでしょ。何で?私言ったよね?悩みがあるなら誰かに話せって。なんで誰にも相談しなかったの?辛いなら辛いって、寂しいなら寂しいって言えば良かったじゃん!!」
「そうすればこの現実を免れることができたと?随分と浅ましいね」
「違う!!!自分を蔑ろにするなって言ってるの!!!」
_____八重Aは泣いた。顔を見なくても分かるくらい、嗚咽を堪えながら強く叫んだ。
「なんで、いっつも…1人で...」
弱かった君。強い君。
私にはどちらも眩しくて手の届かない存在だったが、もう手を伸ばすことすらないだろう。
誰でも捨てれるこの世界を、必死に生きる姿に憧れた。
「…願わくば、最後に君を抱きたかった」
気になっている人がいた。
多分、両思いだった。
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tomishiro(プロフ) - 佝僂さん» はわー!?とっても嬉しいです!おかげで頑張れそうです!ありがとうございます! (2022年7月13日 11時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
佝僂(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!更新頑張ってください!! (2022年7月13日 10時) (レス) @page12 id: 1c770a8388 (このIDを非表示/違反報告)
tomishiro(プロフ) - ぜひ評価の方もよろしくお願い致します! (2022年7月13日 9時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とみしろ | 作成日時:2022年7月7日 20時