検索窓
今日:15 hit、昨日:0 hit、合計:10,729 hit

35.異能 ページ36

「呪詛師を倒してどうだった?」


人気のない山奥の桟橋。葉擦れと虫が私たちを噂している。私は少しどもった後、重い口を開いた。


「_____120人を殺めた呪詛師を父に持つ私に、彼らを批難する権利はありません。…ただ。怒りの矛先を彼らに向け、確かに討った。その事実は術師として誇りに思います。あの家族を助けられて本当に良かった。でも。」


欄干に手を付き、見慣れた街を眺めた。この景色を見てミアさんは何を思ったのだろう。


「どうして世界はこんなにも、不自由なんでしょうか」


ギリ、と握力を強める。それだけで塗装が卵の殻のようにひび割れ、剥がれ落ちたソレが闇に溶けた。


「この世界では、才のある人間(呪術師)は孤立して統制力を握り、才のない人間(非術師)は連帯し支配される傾向にあります。
どちらも根本は同じなはず。私たちは同じ血肉で生きているのだから。」


分かっている。それがこの世界だ。何千年も積み重ねた結果だ。この長い歴史を変えるには、あと命がいくつあっても足りない。


「…呪いさえなければ、この戦いに終わりがあれば、彼女はあんな顔をしなかった。」


自由でありたい。どんな想いも呪いにならない世界で生きたい。
⬛︎⬛︎さんは私の隣で欄干に凭れた。


「どうして私がAを推しているか分かる?」


腕の中に埋もれた頭を起こして彼女の横顔を見つめる。拭えない涙を目に溜めた私は、それを零さないよう必死に我慢した。


「君には特別な力があるからだ。
例えば、「物質化・非物質化」。そして、それを見る八眼。
それらは術式でもなければ呪力でもない未知の力。私は異能(・・)と解釈する。」

「それだけじゃない。怒りを源にした膨大な呪力量、呪いの胎児、両面宿儺から派生した術式…。これだけの謎を握る君は、どうしても高専に入れておきたかった。だから私は君の父親の過去を隠蔽したんだよ。」


切り出されたその話は、私を慰めるものではないと静かに理解する。彼女は続けて言った。


「正直なところ、君を留学させたのは異能を観察するためでもあった。特に八眼をね。」
「!まさか、昨日の事件はあなたが仕組んで…!」
「いいや。でも予想はしていた。」
「酷い…2人は九死に一生を得たんですよ!なぜそこまでして!」


そう言って⬛︎⬛︎さんの顔を見た時、私は妙な恐怖を感じた。

普段の茶化した空気は何処吹く風。
彼女は、気迫のない寧ろ無気力な面立ちで、遥か彼方を見据えていた。

36. Who are you??→←34.呪術廻戦



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (18 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
48人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 夏油傑 , SF   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

tomishiro(プロフ) - 佝僂さん» はわー!?とっても嬉しいです!おかげで頑張れそうです!ありがとうございます! (2022年7月13日 11時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
佝僂(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!更新頑張ってください!! (2022年7月13日 10時) (レス) @page12 id: 1c770a8388 (このIDを非表示/違反報告)
tomishiro(プロフ) - ぜひ評価の方もよろしくお願い致します! (2022年7月13日 9時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:とみしろ | 作成日時:2022年7月7日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。