31.日常 ページ32
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「おはようA!!」
「うわ!?」
耳元で大声を出された驚きで、叫び声と共に片腕が伸びた。
その拳は声の持ち主の眼前で止まる。ぼやけた視界で確認すると、それは紛れもない⬛︎⬛︎さんだった。
「見事な反射神経だ!任務だよ!」
「またですかぁ…どうせジェシーさん家の手伝いでしょ。⬛︎⬛︎さんは私を腐らすために留学させたんですか?」
「そんなことない。全部君の行いの結果だよ」
「…私は毎朝20km走ってますし、勉強だって怠ってません」
「うわ。エリートかよ〜」
あれから、もう11ヶ月。
私はアメリカに留まらず、インド、アフリカ、フランスなどに行き、各地の呪いの発祥やその歴史、宗教、文化を学んだ。
もちろん任務もあるが、どの国も日本と比べ呪霊が極端に少ないことから修行ばかりである。私はそんな日常に呆れ返っていた。
「今回は本物だよ。私の知り合いが一人、行方不明になってね。手がかりなしだ。やってくれるかな?」
「もちろんです!」
「怖」
「残穢がないので、呪霊じゃなく呪詛師ですね。非術師と同行してます」
「やっぱり?」
私は八眼で犯人の痕跡を辿っていた。実際、海外は呪霊より呪詛師の数が大きい。
見える非術師を巧みに利用して犯罪組織を拡大する呪詛師なんてざらにいる。今回はそれだろう。
すると、艶のある高級車が⬛︎⬛︎さんの下に現れた。
彼女はその後部座席に乗り、「私は仕事に行くからよろしく。あと。」といって、窓から物を投げた。
「朝食はしっかり食べなさい。焦りは禁物。」
掴み取ったソレは、無難なカロリーメイト。
お礼を言う間もなく彼女は去ってしまった。優しいんだか企んでんだか、よく分からない人だ。
ああ。傑と硝子の手紙を読み返したい。先月はどんな話をしたろうか。
悟が無免許運転をして車がカジノに突っ込んだ話だったか、傑が釣りにハマってオジサン口調になってしまった話か、硝子が医学部受験生に惚れられた話だったか。
そうこう思い返しながら跡を辿っていくうちに、私の足は海の方へと向かっていた。足跡はここで途切れている。
「船を使ったんならそう遠くないはず…島か!なら、ヘリだ。」
いち早く助けるために、電話でケビンに報告する。
平気で⬛︎⬛︎さんのヘリを呼ぶ私もイカレ始めたが、数分足らずで雲から姿を現す仲間たちも相当狂ってる。
島なら逃げ場はない。どうせなら豪快に行こう!
もちろん、操縦者は乾いた笑いを零していた。
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tomishiro(プロフ) - 佝僂さん» はわー!?とっても嬉しいです!おかげで頑張れそうです!ありがとうございます! (2022年7月13日 11時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
佝僂(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!更新頑張ってください!! (2022年7月13日 10時) (レス) @page12 id: 1c770a8388 (このIDを非表示/違反報告)
tomishiro(プロフ) - ぜひ評価の方もよろしくお願い致します! (2022年7月13日 9時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とみしろ | 作成日時:2022年7月7日 20時