28.はじまり(⚠︎イラスト付き) ページ29
２月１４日。羽田空港にて。
アナウンスが私の乗る便を呼んだので、キャリーケースを引き摺った。
｢まじで１年会えねーの｣
｢なに悟。寂しいの？｣
｢…｣
珍しく否定しない悟に驚く。彼が素直になるのは居心地が悪くて、なんだか照れくさい。
返答に困っていたら、硝子が悟の背を強く叩いた。｢なんか言えよ｣と付け足して。
｢…土産買って来いよ。死体じゃないヤツな｣
｢ふふ、ちゃんと生きて帰ってくるよ。ありがとう｣
拳を合わせて別れを告げる。横にいる硝子と目が合うと、彼女の方から抱きしめられる。そして、隣の傑と目が合った。
｢A、こっちに来て｣
｢え？時間ないよ！｣
｢大丈夫。すぐ終わる｣
手を引かれるがままに、2人とキャリーケースを置いて壁側に移動した。なんだろうとドギマギしていると、傑が私の後ろに回った。
｢綺麗だ｣
自分の首元に淡い輝きが灯った。ネックレスだ。琥珀色の宝石に少しの濁りが籠っていて、だからこそより一層美しく思える。
｢チョコ、美味しかったよ。これは早めのホワイトデー。
君もなかなか酷だよね。1週間でお返しを決めろだなんて。…気に入ってくれると嬉しいな｣
太陽に照らされる、暖かくて情熱的な色。そこに私の顔が反射して見え、胸がじんわりと熱くなる。
そして傑の声を聞いた途端、糸が切れたように私の目から涙が零れた。
｢A？｣
｢ごめん違うの。嬉しいのすっごく…ありがとう傑。ありがとう…｣
ああ。本当にこれから1年間、皆と会えないんだ。顔も声も、手紙以外にコンタクトが取れなくなるんだ。自分で選択した道だけど、寂しいものは寂しい。
“友達を守りたい”という口癖を声に出す度3人の顔がすぐに浮かんでしまうほど、いつの間にか私にとって皆が大切になっていたんだ。
｢おーい、A！出発するぞ！｣
｢…うん！｣
傑の目を見て微笑み、キラリと輝く宝石を見せつけるように2人の下へ走った。後ろ髪が風に揺らいで、彼の記憶に足跡を残す。
キャリーケースを掴んで、大好きな3人の顔を見た。
｢どうか、元気で｣
いつか、また。
＿＿＿この時の私は、知る由もなかった。
本物の悲劇とは、始まりが見えないことを。
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tomishiro(プロフ) - 佝僂さん» はわー！？とっても嬉しいです！おかげで頑張れそうです！ありがとうございます！ (2022年7月13日 11時) (
レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
佝僂(プロフ) - めっちゃ面白いです！！！更新頑張ってください！！ (2022年7月13日 10時) (レス) @page12 id: 1c770a8388 (このIDを非表示/違反報告)
tomishiro(プロフ) - ぜひ評価の方もよろしくお願い致します！ (2022年7月13日 9時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とみしろ | 作成日時：2022年7月7日 20時
