26.アメリカ留学 ページ27
冬休みが終わり、いつも通りの学校生活を送る私たち。
今年の冬は特段寒くて、滅多に雪が積もらない東京でも
「それで_____わ!?おい、悟!!」
教室に雪玉を持ち出した悟が、後ろから傑の頭に向かって投げつけた。颯爽と逃げるのを追いかけて、傑が廊下に消えていく。
「ああ行っちゃった」って思いながらその背中に見蕩れてしまった私は、割と本気で彼のことが好きだ。
「傑は苦いのが好きなんだよね。ビターチョコ…80%くらい?」
自室のベッドの上で携帯をいじる。来月のバレンタインに思考を膨らますほど、自分が恋する乙女なのだと自覚する。
なんだか無性に恥ずかしくなったその瞬間。
Prrrr
「うえ!?」
手元の携帯が振動した。心臓が破裂するかと思った。
…え、傑…じゃないよね?
恐る恐るベッドの上を転んだ携帯を反して表示された文字を見た。そこには、"■■さん"と書かれている。また別の緊張が背中に走ったのを感じ、すぐその携帯を耳に当てた。
《A〜!元気?》
「お、お久しぶりです」
携帯の奥で、シンセサイザーの絶叫と内臓を揺らすほどのドラム音が響いている。それだけで彼女がクラブにいることは想像がついた。
《冥ちゃんから聞いたよ。特級推薦降りるんだって?》
「…はい」
《そこで提案なんだけど。もしよかったら君、1年間アメリカに留学しない?》
「は?」
私が、アメリカに留学?
《ここ最近、呪術界の治安が悪化している。日本は五条が生まれて安定してるけど、海外はそうもいかない。このままだと界隈が腐る。
その抑制として、君の留学体験が必要なんだ。上手くいけば上層部に響くかもしれない。》
「それ、私である意味ありますか?」
《もちろん!"推薦を降りたJKが留学を機に特級術師へ!?"なんて見出し、最高でしょ》
「…なるほど。あなたにとっては降りてくれた方が美味しいんですね」
《フフ。実はもう学長に話は済ませてある。保険も移住もウチが確保するし、あとは君が頷くだけ。》
発言から察するに、■■さんは私を特級術師にさせる気しかないようだ。
脳裏に過るは、硝子の言葉。
___どうありたいかは、何かの選択をした後にこそ考えられることなんじゃない?___
「お願いします」
《ありがとう。出発は2月14日だ。詳細はまた今度》
「わか…え?」
プツ。情けなく途切れた電波を前に、私は固まった。
…バレンタイン当日じゃないか!
「やばい!!」
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tomishiro(プロフ) - 佝僂さん» はわー!?とっても嬉しいです!おかげで頑張れそうです!ありがとうございます! (2022年7月13日 11時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
佝僂(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!更新頑張ってください!! (2022年7月13日 10時) (レス) @page12 id: 1c770a8388 (このIDを非表示/違反報告)
tomishiro(プロフ) - ぜひ評価の方もよろしくお願い致します! (2022年7月13日 9時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とみしろ | 作成日時:2022年7月7日 20時