20.お前は何がしたいんだよ ページ21
黒い火花がAの視界を染め上げた。
その火薬が燃え尽きた時、自分とは一体何者で、どこから生まれたのかという記憶が蘇るのであった。
「あなた、いっつも咲の部屋にいるよね?」
目が覚めたその場所は、狭く苦しい子供部屋。そう分かったのも、Aに話しかける幼女しか使えないような小さな家具ばかりが置いてあったからだ。
「一人ぼっちなの?咲もだよ」
その時、自分の中に2つのものが芽生えていることを感覚的に意識した。「寂しい」とか「悲しい」とかの感情と、「離れないで」とか「会いたかった」とかの感情が流れてくる。
「えへへ、初めてのお友達できた」
その日からだんだん、「離れないで」の気持ちが強くなり、Aと咲は子ども部屋で時間を過ごすことが多くなった。
しかし、そんなある日。咲が子ども部屋に来なくなった。
手も足もないAは、ただその帰りを待った。
だんだんと部屋が物置部屋になり、同時に自分の力がみるみる強まっていることを知った。咲ではない、またどこか遠くの人間が自分の力を強めているのだ。
そしてまた目が覚めた時。Aは手と足を手に入れていた。
だから、隣部屋に顔を見せたのだ。その時。
パシャン!!
「来ないで!何で!?お札貼ったのに!!」
Aは、部屋の中の少女に塩をかけられた。呪霊なので当然効くことはない。そして、その少女が咲であることに気づくのは容易かった。
「あんた達、お化けなんでしょ!咲の学校生活邪魔しないでよ!!」
それは本能であり、意思は無いのだと言い聞かせ。
『とも…ダチ…』
「!…嫌、やめっ」
グチャっ!!
頬を伝う汗は、水にもならず消滅した。
会いたい。離れないで。咲。
「それはお前の意思じゃない。変異体の1現象として処理する。呪いは呪いだ。」
五条はAにそう言った。走馬灯を見るのも、その呟きも、全てが本能であると。
崩壊していくその呪霊を見放せば、意図したように領域が解け、工場施設の内部が顕になった。振り返ると、八重が立っている。
「起きたか。お前の領域暑すぎな。無限使い切ったわ」
「…Aは咲ちゃん以外誰も殺してない。それはAの意思でしょ」
「だから?それを知って慈しめと?」
五条は八重を追い抜いて、その大きな扉を開けた。眩い光が差し、2人の目が合う。
「お前は何がしたいんだよ、A。特級になって、友達守って、その後は?
術師はヒーローじゃない。自惚れるなよ。」
_____暗がりに1人。八重は取り残された。
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tomishiro(プロフ) - 佝僂さん» はわー!?とっても嬉しいです!おかげで頑張れそうです!ありがとうございます! (2022年7月13日 11時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
佝僂(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!更新頑張ってください!! (2022年7月13日 10時) (レス) @page12 id: 1c770a8388 (このIDを非表示/違反報告)
tomishiro(プロフ) - ぜひ評価の方もよろしくお願い致します! (2022年7月13日 9時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とみしろ | 作成日時:2022年7月7日 20時