1.知っている人 ページ2
「…!Aッ!!」
夏油が飛び起きた。そこは帳外の見知らぬ跡地で、周りには補助監督や医療関係者が4人を療養していた。だが、八重はいない。
「っぐ…!」
無理やり身体を起こそうとすれば、折れた肋が疼いた。痛みに目線を落とせば、そこには見知らぬGPSチップが置かれていた。恐らく、八重がこれで助けを呼んだのだ。
その様子を見た医療関係者が、「動いちゃ駄目です!」と近寄る。夏油はその手を強く掴んだ。
「Aは帳の中か!?1年生1人を特級と戦わせるな!!」
「ひっ!?」
「どうやら無事みたいだよ。八重Aは。さっき帳が上がったのを見た」
突然、聞き覚えのない声が後ろから聞こえた。振り返るとやはり、知らない人間がそこにいる。
女性だ。しかもその呪力量...きっと冥さんより強い。
「あなたは...?」
「初めまして。Aのクラスメイトくん。
私は特級術師の⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎。彼女とは入学前に話をしたくらいの仲だ」
特級...!だが、九十九由基ではないのか。
⬛︎⬛︎という女性は挨拶を終える前に冥さんの元へ向かった。近くにいた硝子と悟がそれに気づき、緩く背中を起き上がらせる。
「久しぶり冥ちゃん。全然怪我してないじゃない。どうして戦わなかったの?」
全然怪我してない...だって?
ここにいる私以外の3人は、少なくとも脇腹に500円玉くらい大きい石が貫通している。止血に時間も掛かったろうし、1年は喋れるのもやっとだ。これのどこが軽傷だと思うのか。
そしてその口ぶりから察するに、どうやら冥さんとこの女性は前から関係があるらしい。
「おや、ちゃんと活躍したよ。ただ術式の相性が悪くてね。その代わり怪我した後もAの周りには烏を飛ばして安全を守っていたし、瀕死の後輩たちにも呪力を分けていた。」
「...っす」
「助かり...ました」
「ありがとうございます」
「ふーん...じゃあ本当にあの子1人で特級を祓っちゃったんだ。化け物だね。
ーーー冥ちゃん、明日私と学長に会いに行こう。
八重Aを、特級術師に推薦する。」
「ハ、ハ、ハ、ハ、ハ」
猿謡と領域が消滅した後、八重は倒れて痙攣していた。人並外れたエネルギーの消耗に身体が悲鳴をあげ始めたのだ。過呼吸を起こし、視界が激しく点滅する。
今微かに残る呪力を手放せば、絶対に死ぬ。
「久しぶりA。呪力手放しな。大丈夫、気絶するだけだ」
どこからか知る声が聞こえた。
なぜか私は、その人の言葉を信じた。
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tomishiro(プロフ) - 佝僂さん» はわー!?とっても嬉しいです!おかげで頑張れそうです!ありがとうございます! (2022年7月13日 11時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
佝僂(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!更新頑張ってください!! (2022年7月13日 10時) (レス) @page12 id: 1c770a8388 (このIDを非表示/違反報告)
tomishiro(プロフ) - ぜひ評価の方もよろしくお願い致します! (2022年7月13日 9時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とみしろ | 作成日時:2022年7月7日 20時