46.焔 ページ48
蝉の鳴く、猛暑の夏。
｢お父さ…｣
呪詛師である私には、それはなんてことない光景だった。例え子供でも、才のない非術師なら滅ぶべきだ。でも。
｢わ、私…友達を…ッうわあああああ！！｣
娘が泣いた。赤子の時以来1度も泣かなかった子が、その骸を見て泣き叫んだのだ。
その涙は人を殺した恐怖ではなく、友達を失った悲しみだった。
｢ぎゃああああああ！！！｣
翌日。私は娘を庭の外へと導いた。小さくて温かい手に触れる。なんて愛おしく、切ないのだろう。
強い日に当てることで、日陰で溜め込まれた呪力が暴走を始める。燃え上がる炎が、娘と私を呑み込んだ。皮膚を焼き焦がす痛々しい呪力は、怒りそのもの。娘の痛みがよく分かる。
すまない。私は今まで、お前の気持ちを汲んでやれなかった。
｢A、今から父さんの言葉を復唱しなさい｣
結局私は、大きな責任を幼い娘に押し付ける不甲斐ない父親だ。…だが、これだけは変わらない。
私は家族を愛している。
だから末永く生きていて欲しい。
日に当たれないAにはせめて、誰かを守れる強い力を持って欲しい。
どうか、許してくれ。
ボワアアアアアッ！！！
『なッ！？』
｢ーーー出力、最大｣
八重、覚醒。
父親の全呪力と自分の全呪力を吐き出したそれは、桁違いの量だ。例え生きて帰れても、脳死か心停止だろう。
全身全霊が熱を帯び、赤血球さえも火種に変わる。やがて血管さえも火を灯し、肌の中で模様を描く。
失明した両目は、すでに治っている。真新しい眼は、まさに怪異そのもの。
｢
『ッく！！』
八重が急速に猿謡に接近し、半径20mの円を縮め術式の必中効果をあげた。その一瞬の隙を付き、八重の記憶玉を奪い返す。
やられた！記憶玉が盗られた！クソ、こうなれば帳から逃げる！！
ーーーバリィン！！
『何ッ！？』
馬鹿な！！追いかけて来やがった！！
夕日の下だぞ！何故ダメージを負わない！？
まさか...、
さあ、全てを解放しよう。私は今、自由になった。
お父さん、ありがとう。
お母さん、ごめんね。
今しがた、2人の
｢領域展開ーーー
・
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tomishiro(プロフ) - また、本作はバトル描写が中心であり、恋愛描写は続編で明確になります。後者をご希望の方はもう少しお時間を頂きます。どうかご確認下さい。(こんなとこで話してますけど) (2022年6月20日 1時) (
レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
karenyoshi0308(プロフ) - 八重はいつか夏油と結ばれるんですか？ってコメント頂いたんですけど、難しいところです。 (2022年6月19日 22時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とみしろ x他1人 | 作成日時：2022年6月3日 10時
