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#069 過去… ページ6

母も父も、優しい人だった。


近所からの評判もよく、美男美女夫婦、オシドリ夫婦と言われていた。


____しかし母は、優しくなんかなかった。

その証拠が、私だ。




母は、浮気をして
女の子を妊娠してしまった。


母が妊娠したという、事実を父に告げたとき
父は泣いて喜んだそうだ。


もちろん、母は
赤ん坊の父親は父というスタンスを貫いた。

けれど、父は最初から知っていた。

わかっていた。



父は、生まれつきの障害で
生殖機能がなかったのだ。


母と会ったとき…結婚したとき…
何度も何度もタイミングがあったそうだが、
言えなかったらしい。




それで、この結果だった。


父は、偽物の笑顔で母を支えた。けれど、優しい心の持ち主の父は、途中から


____本当は俺の子じゃないか?


そう思うようになった。

神がくれた宝物だと…



そして私が生まれた。父は、医者に内密に遺伝子検査をするように言っていた。

結果は、クロ。


私は、父の子ではなかった。

けれど、Aという名前は父がつけたものだ。

母は、以前から名前を考えていたようだけど…
父は譲らなかったそうだ。






そして、幸せかどうか分からない日々が続いた。


父は、私が生まれて19年…


この世界から、いなくなった。

母も、後を追うようにしていなくなった。



私は、母のことはあまり好きじゃないが…
嫌いにはなりきれない。


父のことも…あまり理解できない。


とにかく優しすぎた人だった。

いわゆる、馬鹿だったんだ。






けれど…私はそんな人になりたい。

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作者名:色葉怜 | 作者ホームページ:http://uranai  
作成日時:2015年3月17日 23時

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