#036 本音 ページ36
「オレがひとつなぎの大秘宝を見つける…!」
ほんのりと紅く色づいた頰の彼は、少年のような眼差しでそう言い切った。船員達も同様、意気揚々と拳を掲げる。
けれど、その雰囲気についていけないのがA。
「ねぇ、キッド。」
「あ?」
「ワンピースって、何?」
呆れた船長に、大きなため息をつかれるのは言うまでもない話。
一通りの説明を浮かべた後、グラスに残ったワインを一気に流し込んだキッドは再びAへと視線を戻した。
「オレの夢を”笑う奴”はいたが、オマエはとんだ奴だな。…ぶっ飛ばす気にもならねェ。」
「聞いたことはあったんだけど、ね〜。白ひげの船じゃそういうの聞けないでしょ?」
すっかり落ち込んでしまったキッドを、あたふたしながらも励ますA。
”世界最強の男”と謳われる白ひげの船で、ワンピースやら海賊王といった言葉は、簡単に口に出来ないのだ。
「どんな形だろうね、ワンピース。」
「……そうだな。」
形はどうあれ、宝物。それは気になるだろう。
微笑んだ顔を向ける。
「…麦わらの一味と会ったことはあるか?」
キッドからの急な質問。思いもがけないその質問に、数秒考える。
「……会ったことないなー。」
「そうか。オレもない。」
会ったことないのか、言いかけた時…キッドが笑っていたのを見てやめた。この男は”麦わら”に興味を持っているのだ。
モンキー・D・ルフィ。
いつか話していた……エースの、弟。
「……会ってみたいなー。」
ぽつり、と口からでた本音。
独り言に近かったそれに、返された言葉。
「会える、きっとな。」
「キッドだけに?」
「…リペル。」
太陽が傾く時刻、叫び声がこだました。
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シャボンディ諸島までは、まだまだ遠く。
ログポースが指す島も程遠く。
キッド海賊団は、適当な島で食料調達をしていた。
「数時間したら戻るので、決してついてこないでください…!」
「「ひぃ!!!」」
飢餓状態、一歩手前。最近は何故か、空腹を感じていなかったが…身体は正直だ。肋の浮いてきた身体を見て、Aは絶望した。
狂気迫る表情のAに、恐れをなした船員達は叫び声を上げる。
一礼して森へ去っていくA。あっという間に、姿は見えなくなった。
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作者名:色葉怜 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2015年10月17日 19時