#018 昔話 ページ18
シャンクスは最初に仲間に話を通していたのか、赤髪海賊団の船…レッド・フォース号は静かに佇んでいた。
「自己紹介が遅れたな、すまない。オレはシャンクス。」
「Aです。」
Aは小さくお辞儀をすると、そんなにかしこまらなくていいと赤髪が言った。どうやらそんなに怖い人ではないらしい。
けれど、安心するのはまだ早かった。
「単刀直入に聞くが、今まで何処にいた？」
「……今まで？」
今まで…とは、どういう意味だ。
白ひげ海賊団に来る前？
アイン島のこと？
それとも、その前？
赤髪の目を見て、Aは感じた。この人には嘘を通じない。数々の修羅場を冷静に見据えてきたこの目を、自分には到底欺けないと悟った。
「…東京にいました。」
その返答を予想していたのか、赤髪はやはりなと呟いた。
「オレは君の親父さんを知っている。」
「…お父さんを？」
ありえない。
だった、父親は…〔CCG〕に倒されたのだから。
心の奥にしまったはずの記憶の蓋が、少しずつずれていく。
「あぁ、彼は不思議な人だった。」
目を細めて、懐かしむシャンクス。
「君の目が、レイとそっくりだ。」
そう言うと彼は、短い昔話を語り始めた。
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十年以上前の話。
ゴール・D・ロジャーの絶頂期。
ある島に、不思議な男がいた。
その男は、街にいる子供を相手に奇妙な話を聞かせていた。
『人々は、小さな機械を使いこなしていた。けれど、操られているのは人々の方だったんだ。…その機械がないと、生きていけないくらいにね。』
機械に操られる人間の話。
『みんなは男の子、女の子。自分がどちらか分かっているよね？けれど、だんだん性別がいらなくなってくるんだ。好きになるのに性別なんて関係ないからね。』
『どういうことー？おじさん！』
『男同士でも、女同士でも結婚できる社会だよ。オレはそんな社会で生きてきたんだ。まぁ、結婚はしなくていいけどね。』
人間と人間の本能が薄れてきた話。
その男の話は、親や先生達が教えてくれない世界のことで…。子供達の間では、ちょっとした身近な有名人だった。
『おじさんー！お話してー！』
暑い季節なのに、未だ長袖を着た男。
色白で、絹のような黒髪を持つ。
『あぁ、いいよ。今日は…《化け物》の話だ。』
小さな噴水広場には、いつのまにか男を囲んでたくさんの子供達が座っていた。
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作者名：色葉怜 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2015年10月17日 19時
