#016 心配 ページ16
別に心配しているわけではないのだけれど…。
弟を想う兄とはこういうものかと、改めて感じた。それだけ、この二人の繋がりは強い。もちろん、白ひげとも。
「A！マルコ！」
急に名前を呼ばれ、声がした方を見ると満面の笑みを浮かべたエースがいた。
「なんだよい？」
「別に何もねーよ！呼んだだけだ！」
そう無邪気に笑うその顔は、周りの人々を幸せにする不思議な力を持つみたいだ。マルコも頭をかきながら、どこか照れた様子。Aの心も暖かい何かで満たされていた。
恥ずかしさを隠すようにいなくなったマルコ。エースは自分の隣に来るように、とAを呼んだ。
「…さっき、マルコと何話してたんだ？」
辺りはすっかり夕暮れ。溶けるようなオレンジが水平線に沈む。紫と橙の境界線は神秘的だった。
「エースの弟の話。」
「あぁ！ルフィのことか！」
「ルフィ？」
「ルフィもオレと同じで、海賊なんだぜ！」
「へぇ。」
傍迷惑な兄弟だな、と思った。それと同時に、末っ子のエースも兄貴の顔をするんだな、と思った。
「この世界のどこかにルフィはいるんだ。早く会いてー！！」
どれだけ弟のことが好きなんだ、とAは苦笑した。
「Aも会わないか？オレはルフィにAを紹介したい。」
ダメか？とそんな顔で言われたら、断れないじゃないか。
「うん、いいよ。」
エースの弟に。エースの愛しの弟に。
「わかった！約束だ！」
拳と拳をぶつけた約束。
空はすっかり、暗くなっていた。
______________________________________
翌日。
朝から珍しくモビー・ディック号が騒がしい。
どうしたことか、と布団から起き上がった。
窓のないAの部屋からは、外がわからないので…急いで支度をし、外に出た。
船の周りには、別の海賊船がいたけれども戦闘開始の様子はなく…甲板には多くの人の匂いがあった。
「………誰かきた。」
別の船からの大きな気配が近づいている。
その圧倒的存在感を感じながら、Aは人々の方へ向かった。
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作者名：色葉怜 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2015年10月17日 19時
