#014 雪肌 ページ14
艶やかなグロスが、Aの雪のように白い肌をさらに引き立たせる。
美容師のテクニックで整えられた髪は、端正な黒を目立たせた。
着る者を選ぶであろうワンピースに身を包んだAの姿は、息を呑むほど美しかった。
長時間、ドレスアップのせいで待たせてしまったエースの元へと歩みを進める。
「…やっぱり変じゃない？こんなの。」
「いーや全く変じゃねーよ！すっげーかわいい…。」
「どーもありがとう。」
頬を赤く染めたエースの一言を、お世辞だと受け取るA。
店に、お題を払おうとしたら…断られた。
そのかわり、写真を撮らせて…とのこと。
「お好きにどうぞ。何枚でもかまいません。」
「ありがとうございます！広告につかわせてもらいますね♪」
ウキウキな店員。さっきまで一人だった筈なのに、今は四人くらいに増えていた。
しばらく、街を歩くAとエース。
けれど、会話はなく…
”手”だけが繋がれていた。
「A」
「…？」
「…これからどうすんだ？」
何のことか、とハテナを浮かべるAの前で
頭をかくエース。
「…遠くの島で降りる…って本気か？」
Aの本来の目的。
アイン島からの脱出、そして、逃亡。
黙ったままのAのせいか、ぎゅっと強くなる繋がれた手。
「…一生、乗る気はないか？この船に。」
心を見通すような、真っ直ぐに貫く視線が痛く感じた。
「…ありがとう。」
後から私は後悔することになる。
今、この時にどうして話さなかったのかと…。
自分は人間ではないことを知られて、軽蔑されるのが怖かった、嫌だった。
「…考えておく。」
その一言で、その会話は終わった。Aはエースの方を見なかった。直視出来なかったのだ。
「そうか。」
エースもAを見なかった。Aと同様、見ることが出来なかったからだ。
お互い、涙を流していた。
二人はそれに気づかないで、ただ繋がれた”手”だけが知っていた。
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作者名：色葉怜 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2015年10月17日 19時
