【東京喰種】水面下の薔薇【原作沿い】 (ページ5)

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#005 不在ページ5

次の日の朝、利世はいなかった。

今まで、深夜にはここへ帰って来ていたはずなのに。いない。

「…何かあったのかな。」

マイナス思考で埋め尽くされる脳。

それを振り払って、前向きに考える。利世は意外とああ見えて頑丈で強い。だから、大丈夫、心配ない。

今日は普段通り、大学へ。
夜はそう、オーナーの元へ行かなければならない。

今日は帰ってこなくても、明日には帰ってくるだろう。

「…いってきます。」

誰もいない部屋へ向けて言葉を発する。いつもなら、帰ってくるはずの言葉はない。

最悪な結末は、CCGに捉えられること。
最幸な結末は、ふらりと戻ってくること。

その二つの選択肢以外の結末の可能性が高いと、Aの脳が知らせる。分かっている。

私は利世と一緒に暮らしているけれど、利世のことは何にも知らない。現に今何しているのかさえ、見当がつかない。

本を読んでいるのか。
男漁りの真っ最中なのか。
食事中なのか。
街をぶらぶらと歩いているのか。

また、あるいは。

当たり障りの無いことしか、考え用がない。けれど、私は利世の親友。

私を理解してくれるのは、彼女だけで…また
利世の方こそAという喰種を理解して欲しい。

エゴイズムだというのは、承知している。しかし、独りで生きてきた自分にとって、それだけ利世の存在は大きいのだ。

どうか、帰って来て。