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説得しよう ページ21

これは先日、仕立てを依頼しに来た和泉さんから聞いた話だ。




「あらあらこんにちはAちゃん」


『こんにちは、和泉さん』




少し世間話をしていた時に和泉さんはいったのだ。




「あの子も生きていたらAちゃんと同い年くらいだったかしらね」


『あの子…とは』


「春子さんね、娘さんがいらしたのよ。この町でも気が利く子で美人さんでね。でもある時外に出たっきり帰ってこなくなっちゃって噂では鬼に襲われたんじゃないかーって」


『鬼…』


「やだごめんなさい、気分悪くしてしまって。夜には気を付けるのよ」




そんな話を聞いたんだ。




『辛いのはわかるよ、その子と重ねていたんだね。でも別人だよ』


春「…もう。和泉さんはおしゃべりな人ね。でもそう、最初貴方を見つけたときあの子が帰ってきたのかと思ったわ。でも別人だった。でも貴方は私が責任を持って育てる事にしたのもう決めたから」


『私は簡単に鬼には喰われない』


春「わからないじゃない」


『帰らなきゃならない、元の世界に』


春「どうやって?」


『鬼殺隊がいる藤の花の家紋にいって原因を調べる。そしてこの鎹の主を見つける』


春「そんなこと貴方ができるとも?」


『出来るよ、それとこの時代に飛ばされた仲間を集めて皆で帰るんだ』




そう、皆で帰るんだ。徹さんが私以外にもこの時代でさ迷っている奴らがいるから。




春「…負けたわ」




脱力したようにさっきの表情から何時もの笑顔に戻った。




その笑顔は少し、困ったような、泣きそうな顔だった。

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作者名:御前葵 | 作成日時:2019年12月14日 18時

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