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無我夢中で走った。
廊下は走ってはいけません、と書かれた貼り紙があったがそんな事知るもんか。
今はそれどころではないのだ。
角にさしかかった所で唐突に強い衝撃をうけた。
「あっ、すみません」
「大丈夫ですよ。そちらこそ…って あ、城田さん大丈夫??」
(……あぁ、なんて最悪なタイミングなのだろうか)
よりによってバレー部員。
もう一度、大丈夫?と菅原先輩が心配そうに手を差し伸べてくれる。
断るのも変なので、好意に甘えてその手をやんわりとあまり体重をかけないようにして掴まらせてもらった。
ありがとうございます、となるべく顔が見えないように笑って言うと背を向けた。
再び歩きだそうとすると、ピタリ動かなくなった。
正確には菅原先輩に腕を掴まれて動けなくなったのだ。
力強くでも優しい手だ。
(…きっと優しいからモテるんだろうな、)
ふとそんな関係ないことを思った。
ニッコリと精一杯の笑顔を貼り付けて振り返る。
「どうかしましたか?」
「本当に大丈夫?」
「大丈夫ですよ!私カラダ丈夫なので!」
「…そう、ならいいんだ」
引き止めてごめんね、と謝る先輩にいいですよ、と微笑みかける。
きっと転んだことについてではない事の " 大丈夫 " だったろうけどあえて気づいていないフリをした。
先輩は優しい。
こんな人間にも優しく接してくれるのだから。
先輩は本当に優しい。
どんな人間にも手を差し伸べてくれるのだから。
…だけど甘えちゃいけないんだ。
そんな優しい人に迷惑をかけちゃいけない。
かけてはいけない、かけたくない。
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作者名:maru | 作成日時:2017年9月18日 9時