【文豪ストレイドッグス】人形劇と海の星

第41幕 ページ43

「久しぶりね」

「久しぶり、旭さん」

涼しげなグラスの乾杯の音が響く。

Aの部屋の真ん中のちゃぶ台で、2人は向かい合って座っている。

「……怪我、してたんだってね」

「ええ、まあ。お陰様でよくなりました」

嘘だ。

私は知っている。

Aのポケットの白い封筒がカサッと音をたてる。

怪我なんてしてないし、そもそも私は此処に居なかった。

そして、記憶を改ざんされているのだ。

ポートマフィアに拾われたわけでもない。

最も、親は死んでいるのだが。

私は知っている。

記憶操作の異能を目の前の唐澤に使われていることも。

私は知っている。

私がやらなくてはならないことを。

「…つい先程、中原幹部直属情報員の持木さんが此処にいらっしゃいました」

Aは切り出す。

「へえ。紫苑ちゃんが」

唐澤は頬杖をついて酒をあおる。

「ええ、病み上がりだったからかこう言ってくれましたよ」

「なんて？」

Aは眉を上げてみせると、白い封筒を掲げた。

「自分くらい信じてやれ、って。ね？」

〈拝啓No.3様〉








〈敬具佐倉A〉

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