【文豪ストレイドッグス】人形劇と海の星

第27幕 ページ29

「えっと…」

谷崎が困ったように頭をかく。

「どういう意味ですの？」

ナオミもそれに便乗して首を傾げた。

「ポートマフィアです」

Aは下を向いて話し出す。

「私を連れ戻すため、こんな手段を」

「詳しく聞かせるてくれるね？」

太宰が柔らかく微笑む。

この微笑みは、心からじゃない。

その証拠に目が笑っていない。

話さないと、私は殺される気がする。

「中原幹部の部下に、記憶操作の異能を持つ女が居ます。その女は記憶を改ざんすることも出来れば、私たちにしているように記憶を奪い取ることもできます。止める方法は、その女を殺すことです。殺さないと、奪われた記憶は戻ってこない」

「その女の名前は」

国木田が聞いてくる。

「彼女は……」

あれ、彼女は？

誰だっけ？

なんていう名前だっけ？

「A？」

「彼女は……」

Aが困ったように頭を振る。

「名前を……忘れてしまいました」

その声が、震えているように聞こえたのは1人だけではなかった。

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