83*透視。 ページ3
もう少し作業したい、っていう智さんはお家に残るみたいで、
私は車の返却時間もあるからそろそろ帰ることにした。
「Aちゃん、今日は１日ありがとねぇ」
「こちらこそ、ありがとうございました」
「おれ、頑張ってお家作るね！」
「お家作る」って、ちっちゃい子供がおままごとでいうみたいなセリフを、
大人の智さんが言ってることも、それがやけに似合ってることもなんだか面白い。
「また手伝えることがあったら、呼んでくださいね」
「うん、ありがとう」
車が発進して、角を曲がるまで、
智さんが手を振ってるのが見えた。
「はあ…」
なんだか、今日１日が夢みたいだ。
これまでの人生で一番いい夢です！って次の瞬間には起こされても、
私それを信じちゃうし、幸せだな、って思うだろう。
でも、助手席に微かに残る智さんの香りが、
ひんやりとしたハンドルの感触が、
これは現実だよ！って教えてくれてる。
もちろんお酒なんて飲んでないし、季節の変わり目で寒いはずなのに、
なんだか身体が火照っていて、
私は運転席の窓を小さく開けて、少しだけ夜風を取り入れた。
レンタカーショップにいたのは、朝とおんなじお兄さんだった。
「ありがとうございます。鍵お預かりしますね」
「はい」
「ちょっと確認してくるので、少々お待ちくださいね」
カシャン、と鍵をカウンターに置くと、
お兄さんは鍵と紙を持って、車の方にスタスタと歩いて行った。
冷たいベンチに座って、ぼうっと今日のことに思いを馳せる。
朝ここに来たときは、まだこのニットが、
『セレストブルー』だってことも知らなかった。
智さんはチョココロネが好きなことも、
おでんの卵は出汁に溶かせばおいしいってことも、
近くで見た智さんの瞳に、あんなにドキドキしてしまうことも。
いい大人のくせに
まるで、『恋』を初めて知った学生の頃みたいだ。
「お客様？」
「…えっ、あっ、はい！」
ポンポン、と肩を叩かれて慌てて振り返ると、
お兄さんが小さく苦笑してた。
「点検、大丈夫でした」
「あ、ありがとうございました…」
色々考えてたのが恥ずかしい、顔、赤くないかな。
「またぜひ、ご利用下さいね」
「はい、ぜひ…」
バレる前に帰ろう、って思ってドアの方を向いた瞬間、
「…楽しかったみたいで、何よりです」
はい、とても…
「…えっ！？」
ウソっ、顔に出てる…！？
お兄さんはクスクス笑うと、ご利用ありがとうございました、と頭を下げた。
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はりはり(プロフ) - 続き待ってますっ！ (2021年1月7日 22時) (
レス) id: 52ba9d7a4c (このIDを非表示/違反報告)
璃夢(プロフ) - さわさん» さわさん、コメントありがとうございます♪ ゆったりした雰囲気が好き、と言っていただけるのがとても嬉しいです！私もお近づきになりたいです…理想が詰まってます笑 これからも気長にお付き合いいただけると嬉しいです！ (2020年8月9日 23時) (レス) id: ede626204f (このIDを非表示/違反報告)
さわ(プロフ) - 初めて感想書かせていただきます。ゆったりとした時間の流れが心地良く読ませていただいてます。いいなー。私もこの大野さんと近づきたい…。瑠夢さんのペースで、書き進めてください。のんびり楽しみに待ってますね (2020年8月3日 2時) (レス) id: ce4d4ad581 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃夢
| 作成日時：2020年8月3日 0時
