46 個性 ページ5
「え⋯⋯?」
「覚えてないの?」
意味がわからない。
そんな気持ちが顔に出ていたのか、もう一度「もう、忘れちゃったんだね」と“わたし”が繰り返した。
「 Aは昔、予知夢が見れたの。とても些細なもので、大災害や有名人の結婚を言い当てられられる程じゃなかったけど。それでも確かに、見れてたの。」
「あ⋯⋯⋯⋯」
どうして今まで忘れていたんだろう。
そうだ。確かにそうだった。
明日風邪をひいて担任の先生がお休みする。とか、2日後うさぎのみみちゃんは飼育小屋から脱走するけど、校庭の木の窪みに隠れている。とか。そんな程度の夢を。
見て。それはいつも現実になった。
ただ子供の持つ不思議な直感のようなものだったのかもしれない。⋯⋯でも。
「でも、それをクラスメイトのミンソに話したら馬鹿されて、嘘つきだって。」
子供が子供をいじめたり、仲間外れにする発端なんてほんとに些細で。今思えばなんてことなくても。
それに、子どもの頃はその教室が、世界の全てだった。
「だから、殺したの」
「変なんだ。未来の夢なんて見れない方がいいんだって。どうせ役に立つほどじゃないしって」
「Aは、未来の夢を見るAを、殺したの」
そうだ。
そうだったんだ。
「オンマにもう高学年なんだからって自分の名前が一人称なのはやめなさい。って。Aって自分のことを呼ぶわたしを殺した」
「アニメのイラストを描くのが好きな自分を」
「ずっとずっとなりたかった夢を見る自分を」
「ーーくんのことを好きだった自分を」
「期待する自分を」
「わがままを、本音を言う自分を」
「本音を」
「ーーーーなこと、ずっと気づいてたのに」
「自分で、殺したの。
死ぬようにって、ミンソに。オンマに。ノートを奪ったクラスメイトに。片想いの相手に。
ミンユンギに。
殺されてきたの」
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苺あめ(プロフ) - 毎回楽しみでした。彼女とユンギの出会いが気になりました。一度無くした信頼はなかなか取り戻せないですよね。でも『続く』ってなってたので、また物語が始まるのを期待してます。 (2月7日 11時) (レス) @page20 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろい | 作成日時:2024年1月19日 22時