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60 空瓶で溺れる。 ページ19

「変わりたかった」





ユンギさんの最後の言葉が思い出される。




そうだよ。変わりたかった。分かり合いたかった。






なのに、いつかわたしはユンギさんを見失っていた。

ユンギさんがどんな人なのかも、何がうそで、どれがほんとで、どこに本心があるのか、どこにいるユンギさんが本当のユンギさんなのか、もうわたしにはわからなかった。












それでも。








愛している。








ユンギさんの顔が、笑った時に見える顔も、猫みたいになるところも、匂いも、白い肌も。声も。匂いも。たまに砂糖みたいに甘いところも。

歩くのがそんなに好きではないくせに、夜の散歩に付き合ってくれた。人通りも車通りもない深夜の信号で立ち止まるわたしに苦笑して。でも何も言わず待ってくれるところが好きだった。

この年になっても歯磨き粉も口の端につけたままにするわたしに、かわいいなと笑うところが好きだった。

車で急なブレーキを踏んだ時わたしを守るように伸びてくる手も、

わたしの写真を撮りたい時の少し下手くそな誘導も、

不器用に、わたしを思ってくれているところも

初めてわたしが料理をした時の嬉しそうな顔も

意外とお揃いが好きなところも。

わたしが一度美味しいと言ったお菓子をずっと買ってくるおじいちゃんみたいなところも。

眠る時ひっついてくる癖も。

腕枕しては痺れてひっそりと後悔している姿も。















好きだ、好きだ、好きだ。







⋯⋯好きだった。










でも、愛し合っているからこそ、別れないといけなかった。それは、もう。ずっと、ずっと、ずっと。前から分かっていたの。












ユンギさんがくれた言葉が、思い出が、熱が、蘇ってくる。

けど、それは同時期に他の女の人にも与えられたもので。






二律背反。







「うぅぅ、うーーーーーっ」







押し殺しても、悲鳴のような自分の泣き声が溢れて、病室に響いた。










呼吸ができない。手が痺れて。



ひっ、ひっ。と。苦しい。苦しい。のに。














「ジョンユくん⋯⋯⋯」
















息ができないのに、死ぬほど苦しいのに。



これじゃ死なないことを、わたしは知っている。



















「どうして⋯⋯どうして殺してくれなかったの」










.

あとがき→←59 溢れて、



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苺あめ(プロフ) - 毎回楽しみでした。彼女とユンギの出会いが気になりました。一度無くした信頼はなかなか取り戻せないですよね。でも『続く』ってなってたので、また物語が始まるのを期待してます。 (2月7日 11時) (レス) @page20 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しろい | 作成日時:2024年1月19日 22時

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