59 溢れて、 ページ18
涙がとめどなく溢れる。
息が苦しい。ひゅっ。と。うまく吸えない。
呼吸の仕方が分からなくなる。
ユンギさんはわたしを裏切った。
けど、彼の口から出た『結婚しよう』『愛してる』全部。きっと、うそじゃない。
本命もわたしの方だったんだろう。彼の言動を見ていれば分かる。
愛してくれていたのに。結婚まで考えてくれたのに、どうして浮気したのか。
なんて、男性に対して愚問だ。
『そういうもの。』
この年になれば理解できる。
だから、我慢してきたの。ぜんぶ。
わたしには何もない。特質した才能もなく、努力してきたものも特になく、将来の夢だってない。
すこし先の小さな出来事を、夢で見ることが出来た。もう昔のように頻繁ではなくなった。今回が何年も開いたのに、次いつ見るのか、もしくはその機会があるかもさだかじゃなかった。
絵を描くのが好きだった。中学2年生までは上手だった方だと思う。オタクだとバカにされたのが嫌で、クラスで人気で可愛いあの子に憧れて。やめた。
まんが家になりたかった。それほど絵が上手くならないのであればストーリーだけ。小説家でも。
アナウンサーになりたかった。自分はそこまでアナウンサー顔じゃなかったこと。人前に出るのが怖い。英語も苦手だった。ユンギさんの作った曲を歌える歌手もいい。
何かと理由をつけて後回しにするたびに、軌道修正できないところまで、きてしまった。
ユンギさんと付き合っている。それは何にないわたしの唯一のアイデンティティだった。
ユンギさんと付き合っていれば衣食住にも困らない。すぐ目前に迫っている就活からも目を背けられる。
「やりたいことがないならずっとおれのとこにいれば。お前1人くらい養ってやるから」
いつかのユンギさんが今でもそう冗談めかして、半分本気で。そう笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1585人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
苺あめ(プロフ) - 毎回楽しみでした。彼女とユンギの出会いが気になりました。一度無くした信頼はなかなか取り戻せないですよね。でも『続く』ってなってたので、また物語が始まるのを期待してます。 (2月7日 11時) (
レス) @page20 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しろい
| 作成日時：2024年1月19日 22時
