58 零れ落ちる ページ17
もう終わりだった。
どうしようもなく。ボロボロだった。
わたし達は、お互いに変われなかった。
信頼関係も、もう互いに修復は出来ないのは、それを試みた数ヶ月間で分かった。
ユンギさんが落として行ったままにしたスマホを拾い上げる。
案の定、あの人からカトクが追加されていて、ユンギさんの写真が送られてきていた。
血まみれな心臓が、踏み躙られる。
「ザマァ見ろ」
吐き気を催すあの声に、笑われているような気分だ。
思い通りになるのが癪だと言う気持ちもあった。
ミンユンギ。
カトクのトーク履歴。
わたしが見れない間も、ユンギさんは「早く起きて」「愛してるよ」「寂しい」「会いたいよ」と、何かに願いをかけるように着信まであった。
必要はないはずなのに、態々登録された電話番号。嬉しかった、「かわいい」とか「すき」って送られてきた時のカトクのトークのスクショ。
一緒に行った桜、紅葉、雪。
SNS映えするご飯。
ユンギさんの、横顔。2人で写った写真。
ユンギさんと一緒に買いに行くはずだった、お揃いのピアスの候補がならんだメモ帳。
ユンギさんに作ってあげる予定だった料理のレシピの候補。
ユンギさんの車で流す、プレイリスト。
一緒に何度も聞いた曲。
「あぁ⋯⋯⋯あぁ⋯⋯⋯」
指輪だけじゃない。全てが、ゴミになっていく。
ボロボロに割れた瓶から、こぼれ落ちていく。
色を失い、価値を、自らの意思で喪失していく。そうしなければ、いけなかった。
もう、彼氏じゃ。ない。
ただの他人になって、共通点のないわたしたちは、今後、交わることも、きっと、もうない。
浮気しててもよかった。
愛してた。否。今でも、愛してる。
ほんとは今すぐにでも走って行って、やっぱり別れたくないと叫びたい。結婚しよう。って。
もう二度とあの人と会わないのであればそれでいいって。
1585人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
苺あめ(プロフ) - 毎回楽しみでした。彼女とユンギの出会いが気になりました。一度無くした信頼はなかなか取り戻せないですよね。でも『続く』ってなってたので、また物語が始まるのを期待してます。 (2月7日 11時) (レス) @page20 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しろい | 作成日時:2024年1月19日 22時