56 割れる ページ15
「ファンの⋯⋯ファンのいやがらせで⋯⋯おれとヌナの写真も、勝手に⋯⋯」
「⋯⋯じゃあ今から一緒にみますか？ わたしのスマホ。一緒にいたって予想が当たってるなら、またユンギさんのスマホからわたしの連絡先を知って何か送ってきてると思うので」
視界に入るテーブルにそれは置いてあった。
分かっていたから、目が覚めてからも意図的に開いていなかった。
ユンギさんにiPadとノートPCを借りてアニメを見るわたしをみて、ユンギさんは「アニメ見てるの初めて見た。アニメとか見るんだな」と言った。
スマホを手に取ろうと体を動かしたのを、頭の傷が止めた。
顔が歪む。痛い。
ユンギさんはわたしの視線が動いたのと同時に、すぐに立ち上がり、わたしのスマホを奪うように取った。そしてわたしから守るように胸の前で握ってみせる。
そんなことをしても、もう、遅いのに。
「違う⋯⋯⋯違う⋯⋯⋯ごめん、辛かったんだ。無理だった。お前が眠ってる間1人じゃ⋯⋯⋯⋯ほんとに⋯⋯⋯⋯耐えられなくて⋯⋯⋯」
絞り出すように。
『絶望』という言葉がよく似合う声色だった。
けど、あなたが彼女のところにいたのは、わたしがこうなった時だけじゃなかったですよね。
みっともないんですよ。
「もういいんです。ユンギさん」
「A⋯⋯っ」
「言い訳も、嘘も。もう聞きたくないです。わたしも知ってたのに黙っててごめんなさい。けどもう、終わりなので」
ベッドに頭を押し付けて嗚咽し始めたユンギさんに、怒る気持ちも、責め立てたい気持ちももうなく、かける言葉も見失って、ただ、その頭を撫でた。
「愛してる、ほんとに、ごめん⋯⋯ごめんな。ほんとに好きなんだ。」
「知ってます」
「ヌナとはもう会わない、連絡先も消す。だから⋯⋯」
「ユンギさん、もう無理なんです。取り返しのつかないところまで来ちゃったんです。全部」
こんなに泣いているユンギさんを初めて見た。
悲痛な声に、胸がじくじくと痛む。
頭を撫でる手は、いつの間にか止まっていた。
「ユンギさん、愛してます。ずっと、ずっと」
かたんと音を立ててユンギさんの手からわたしのスマホが床に落ちた。
わたしにはなぜかそれがヒビの入った硝子が最後。地面に落下して。粉々に飛び散っているように見えた。
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苺あめ(プロフ) - 毎回楽しみでした。彼女とユンギの出会いが気になりました。一度無くした信頼はなかなか取り戻せないですよね。でも『続く』ってなってたので、また物語が始まるのを期待してます。 (2月7日 11時) (
レス) @page20 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろい
| 作成日時：2024年1月19日 22時
