53 蓋 ページ12
「⋯⋯⋯は？」
意図せず溢れた声に聞こえた。
「なんで」
笑えない冗談ならやめろよ。
わたし達は今まで喧嘩も碌にしたことがなかったし、「別れる」という話もあの時を除けばどちらの口からも出たかことがなかった。
ソクジンさんから、「うまく行ってないの」と聞かれた時、わたしは付き合ってから今までで1番うまく行っていると答えた。嘘じゃない。嘘じゃないのに。
「ユンギさん、わたしが眠っている間。どうでした？」
「どうって⋯⋯、言い表せない。苦しかったしつらかった。なんで気づいてやれなかったって思ったし、そもそもおれが離れなきゃ起こらなかったことだから自分のことも責めた。不謹慎かも知れねえけどもしもAがそのままいなくなったらおれも死のうとさえ思った」
嘘はないように聞こえた。
そう、いつも。嘘は言わない。わたしたちは。
ただ、同時に。嘘を言わないことだけが、“嘘”ではないと言うこと。
「その間。どこにいたんですか？」
「は⋯⋯⋯⋯？」
「ちゃんと自分の家にいました？」
「そうに決まって⋯⋯」
「もう誤魔化さないでください。家だとして、1人でしたか？」
ユンギさんの瞳が、露骨に揺れた。
体は震えていた。わたしの方がだ。
殺したんだ。殺した、はずだった。
本音にも、真実にも蓋をして。気づいていないふりをして。
けど、いつまでも、抉られた傷に、見て見ぬ振りは、できない。
「わたしとやり直そうとして、前みたいに戻りたくて、ヌナとは別れましたか？」
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苺あめ(プロフ) - 毎回楽しみでした。彼女とユンギの出会いが気になりました。一度無くした信頼はなかなか取り戻せないですよね。でも『続く』ってなってたので、また物語が始まるのを期待してます。 (2月7日 11時) (
レス) @page20 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろい
| 作成日時：2024年1月19日 22時
