プロポーズ ページ42
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「二週間お世話になりました」
玄関で寝ぼけ眼を擦りながら寝間着のまま頭を深深と下げるのはA。いよいよ本日、北が家政夫として任期満了を迎えたのだ。
北は荷物を持って「こちらこそ」と笑うと彼女に貰っていた合鍵を返し、靴を履いた。
Aはじっとその丸い頭を見つめながら考えていた。
自分たちって、これからどうなるんだろう。私は北くんが好きだ、北くんも恐れ多いが私を好きだと言ってくれた。
でも、付き合うとかそう言う話は出ていない。そんなことよりも仕事を辞めることに必死だったし、未だに北くんが自分を好きでいてくれているなど半信半疑だ。
少しの不安と、深い寂しさ。連絡先は交換しているが、北がここを出た途端にAと彼は他人になる。それが酷く恐ろしい事のように思えて、Aは自分の手が震えるのを感じた。
その時、いつかに聞いた言葉が頭を掠め、Aは立ち上がった北の手をがっしりと掴んだ。
北は突然のことに驚いているが、行動を起こした張本人のAの顔も驚きに染まっていた。
「Aさん…?」
「……け、け」
「け、何?」
どうしたん、と聞いてくる北にAは我慢が出来なくなり彼を正面から強く抱きしめる。
北は自分の肩あたりにある彼女の頭を見ながら、彼女が優しい香りを漂わせるようになったなとぼんやり考えていた。
北はゆっくりと彼女の背中に手を伸ばし、恐る恐るそこに触れる。北の手にはドクリドクリとあまりにも早い鼓動が伝わってくる。
「結婚してください!!」
北の耳元で囁かれたその言葉は、北の体を硬直させる。
頭の整理が追いつかない間に彼女の顔が北の近くに迫り、その柔らかい唇が重なる。初めての感覚に混乱しながらも一瞬で離れていった彼女の顔が真っ赤に染まっていたことに北の顔も熱くなった。
「結婚…」
「あ、や!!そ、そういうことが言いたかったんじゃなくて、なんというかその…北くんと他人になるのが嫌、みたいな…」
何言ってるんだバカ、と自分の頭をワシャワシャと掻く彼女の顔は耳まで赤くなっていて、顔を赤くした北も口を噤んだ。
自分だって、本音を言えば彼女と離れたくはない。しかしあまりにも初めてのことでどうしたらいいか分からなかったのだ。
でも、今の彼女を見て既に答えは出てしまった。彼女とこれからもずっと一緒に居れたら、どんなに幸せだろう。多分それはこれ以上に何も望むものはないくらいだと思う。
「そういうんは、俺から言いたかったわ」
北は笑いながらそう言う。
Aはまたしても北を見て赤面するとその場に蹲った。
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赤羽 - 好きです。最高 (4月12日 23時) (
レス) @page45 id: b22b7ccd76 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 今まで読んだ作品のなかで一番の作品でした！完結まで書いてくださり、ありがとうございました！ (12月17日 18時) (レス) @page45 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
rin - めっちゃ好きです (9月12日 21時) (レス) @page45 id: 452f9d3433 (このIDを非表示/違反報告)
朝ごはん(プロフ) - 最高です。 (2022年1月10日 1時) (レス) @page45 id: 9242d0adf9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 素敵なお話で、一気に読んでしまいました！心が温まりました。 (2020年11月5日 21時) (レス) id: 92da2ec8b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴいち | 作成日時：2020年2月10日 23時
