休日 ページ27
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北がAの家に来て初めての休日。
Aは久々に朝遅く起きて、北の作った朝食を食べる。彼に住み込みで働いて貰うようになって、そりゃ割増で料金は請求されるが、家に誰かが常にいるというのは心地がいい。
Aはそう思いながら、ベランダで洗濯物を干す北の背中を眺めた。
―――――もっと彼を知りたい。
北が一体何者で、今まで何を見てきて、どんな人と過ごしてきたのか知りたい。
途端に自分よりももっと華やかで、彩のある生活をしてきたであろう北の事が知りたくなった。
「北くん」
「ん?どないしたん、なんか思い詰めた顔して」
「今日、一緒に出かけてくれませんか」
気付けば漏れていた言葉に、Aは慌てて訂正する。やっぱり休みたいですよね、すみません迷惑ですよね、と言葉を付け加えて逃げるように空いた食器をシンクへ運ぶ。
その時、グイッと腕が後ろに引かれてAの動きが止まった。
ガチャ、と手に持っていた食器が音を立てたのが静かな部屋に嫌に響いた。
「そんなことない」
「北くん…」
「おれも、Aさんのこともっと知りたいて思てたから…嬉しいわ」
その北の言葉に、Aの心臓がドクリと音を鳴らす。
北が自分のことに興味を持ってくれている、その事実に嬉しいような、恥ずかしいような。
でも、他人に初めて向けられる"興味"に少し怯えている自分がいた。
それでも、Aは北が自分を知りたいと思ってくれているように北のことが知りたい。
「ホントですか?」
「あぁ、Aさんが良かったら」
「はは…私から誘ったんですから、良いも悪いも無いですよ」
善は急げ―――
Aは食器を急いで洗うと、北と共に行きたい場所を考える。
北のことをもっと知れるような、そんな場所とは一体何処だろう。そう考えていると、北がハッとしたように手を打った。
「おれ、中田さんから水族館の割引券もろてたんや」
「水族館…」
「水族館なんて、昔ばあちゃんと二人で行ったっきりやな」
北はおばあちゃんっ子らしく、それを語る顔は何度か見たことがある優しい顔で。
Aは考えるよりも先に、そこにしましょうと身を乗り出した。
そこに行けば、自分の知らない北の素顔が見れそうな気がしたのだ。北はそんなAに目を丸くしながら割引券をチラつかせる。
「ホンマにええんか、こんなとこで」
「せっかく割引券あるのに、使わなきゃ損ですよ」
「ふっ…それもそうやな」
そうと決まれば、とAは何ヶ月かぶりに、きちんとした私服にメイクを施さねばと気合いを入れたのだった。
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赤羽 - 好きです。最高 (4月12日 23時) (
レス) @page45 id: b22b7ccd76 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 今まで読んだ作品のなかで一番の作品でした！完結まで書いてくださり、ありがとうございました！ (12月17日 18時) (レス) @page45 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
rin - めっちゃ好きです (9月12日 21時) (レス) @page45 id: 452f9d3433 (このIDを非表示/違反報告)
朝ごはん(プロフ) - 最高です。 (2022年1月10日 1時) (レス) @page45 id: 9242d0adf9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 素敵なお話で、一気に読んでしまいました！心が温まりました。 (2020年11月5日 21時) (レス) id: 92da2ec8b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴいち | 作成日時：2020年2月10日 23時
