家政夫の恋 ページ20
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北は彼女に夕食を作らなければならないから、と夕方になる前には居酒屋を出る。
ちょうど駅まで道が同じだという宮兄弟と並んで歩けば、通行人の視線をよく集めた。
しかし、当の本人たちは全く気にもとめない様子で口を開く。
「おれらも北さんの恋する相手に会いたいですわ〜」
「…Aさんは仕事頑張ってはるからな、そんな暇ない思うねんけど」
「…その人、そんなに社畜なんですか?」
「初めてあった時は、死んどるような顔をしとった。悪い言い方になるけど、ホンマに辛うじて動いてる死体…みたいな、化粧も適当やし髪も所々ボサついてるみたいな」
北が初めて見た時のAの話をすれば、宮兄弟は顔を歪める。Aの名誉のためにも、北は根はいい子で美人さんやで、とフォローを入れた。
でも、初めは本当に動く死体のようだと思ったものだ。
ストレス社会で揉みくちゃにされたAは体から悲壮感を漂わせていて、北はどうにかして助けになりたいと強く思ったのだ。
これも、角名の言う"好き"からくるものだろうか。
「あの子は、多分ひとりじゃアカンねん。真面目で優しい子やから、上手な生き方が出来んくて……せやから、誰か傍にいてやらんと。
その役目がおれじゃなくても、Aさんが許してくれるまで、おれが支えてやりたいって思うねん」
つい、彼女のことを想うとポロリと出た本音。北がハッとして少し後ろを歩いていた宮兄弟を振り返ると、二人は顔をニヨニヨさせながら笑う。
「北さんって、尽くしてやりたい系男子やったんですね」
「北さんにこんなこと思わせた女の子とかめっちゃ気になるわあ…」
「あんなぁ」
小言を言おうとした所で、駅が見えてきた。宮兄弟はそそくさと逃げるように俺たちはこれで、とまた飲みに行く約束を取り付けた上で手を振りながら街へと消えていった。
北は駅前に一人佇みながら、ぼうっと人混みを見つめて考える。いつの間にか、北の頭の中にはAが美味しそうにハンバーグを頬張る姿が思い出されていた。
「尽くしたい…か、確かに」
今日はなにを作ろう。ゆず湯は喜んでくれるだろうか。最近夜は眠れているだろうか、紅茶には安眠効果があるものもあると聞いた。
Aのことを想うだけで、沢山のしてやりたいことがポンポン思い浮かぶ。
これが、俗に言う恋なのだろうか。
はたまた、ただの家政夫としての気持ちなのだろうか。
恋愛など経験のない北からすれば、その感情が何なのかなど分かるわけも無かった。
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赤羽 - 好きです。最高 (4月12日 23時) (
レス) @page45 id: b22b7ccd76 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 今まで読んだ作品のなかで一番の作品でした！完結まで書いてくださり、ありがとうございました！ (12月17日 18時) (レス) @page45 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
rin - めっちゃ好きです (9月12日 21時) (レス) @page45 id: 452f9d3433 (このIDを非表示/違反報告)
朝ごはん(プロフ) - 最高です。 (2022年1月10日 1時) (レス) @page45 id: 9242d0adf9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 素敵なお話で、一気に読んでしまいました！心が温まりました。 (2020年11月5日 21時) (レス) id: 92da2ec8b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴいち | 作成日時：2020年2月10日 23時
