男≠狼 ページ16
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「あのさぁ、中谷。昨日の男の話なんだけどさ」
例の同期が仕事の合間に話しかけてくる。今までコーヒーなど渡してくれたことも無く、逆にパシられていたのに本日はご丁寧にカップを渡してきた。勿論、中にはアツアツのコーヒーが入っている。
Aはミルクとガムシロをドバドバ入れると、マドラーで適当にガシャガシャかき混ぜて喉の奥へ流し込む。
「え、なに。中谷その人と付き合ってんの?会って2日で?」
「付き合ってないよ。ちょっと色々あって一緒に住んでるだけ」
「ソイツって幾つなの、会社員?」
「大学生……私の一つ上だけど」
昨日の合コンがハズレだったのか、同期はいつになく不機嫌そうに眉を潜めながらAに北のことを問い詰める。なぜそこまでして知りたいのか、甚だ疑問だったがAは律儀に一つ一つの質問に答えた。
適当にあしらうと、後からの女性社員の報復がキツいからだ。
「そんな男とひとつ屋根の下にいて、何も起きないわけ?」
「…あの人は、そんな人じゃない」
自然と零れたそんな言葉。あとから考えれば、完全に恋に盲目な女のようだと思うけれど、北はそんな人間ではないとAは彼と数日過ごして知っていた。
お前と一緒にするな、北くんに失礼だろ。Aはそんなことを悶々と思いながら、同期の方へ向けていた体を戻し再びキーボードに向き直る。
すると、黒いストッキングを履いた膝辺りにピトリとした感触があって思わず軽い悲鳴を上げた。そこには、同期の大きな手が乗っていて、ゾワリと背筋が嫌な音を立てる。
「気をつけねぇと、中谷すぐにソイツに食われちまうぞ」
「な、に言ってんの」
「いくら完璧で真面目そーだからって、安心し過ぎなんじゃない?男はみんな狼って聞いたことねーの」
そんなの、あるに決まっている。それでも、Aは同期には言われたくなかったし、北はそんな人間ではないと思っていた。
北も一人の男なのだが、彼だけは特別で。家政夫として自分に尽くしてくれる優しい彼が、ひとつ屋根の下に居るからといって、女性に平気で手を出すような不誠実な人には思えないのだ。
「北くんは、大丈夫だよ」
しかし、根拠の無い自信を元にAは同期に向かってそう言うしかない。
そして、それを聞いた同期は余計に不機嫌な顔になって眉を潜め、口を尖らせると自分の注いだ冷めたコーヒーに口をつけた。
それは苦くて、渋くて、以前Aの淹れたものとは比べ物にならないものだった。
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赤羽 - 好きです。最高 (4月12日 23時) (
レス) @page45 id: b22b7ccd76 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 今まで読んだ作品のなかで一番の作品でした！完結まで書いてくださり、ありがとうございました！ (12月17日 18時) (レス) @page45 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
rin - めっちゃ好きです (9月12日 21時) (レス) @page45 id: 452f9d3433 (このIDを非表示/違反報告)
朝ごはん(プロフ) - 最高です。 (2022年1月10日 1時) (レス) @page45 id: 9242d0adf9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 素敵なお話で、一気に読んでしまいました！心が温まりました。 (2020年11月5日 21時) (レス) id: 92da2ec8b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴいち | 作成日時：2020年2月10日 23時
