ヘタクソやねん ページ13
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北はホクホクした気持ちで帰路についた。駅近くまで行かずとも、安いスーパーはAのマンションから歩いて十五分程の距離にあった。
そして、丁度タイムセールに居合わせ運良く本日の晩御飯に必要な物を安価で手に入れることが出来たのだ。
「これは中谷さんにも教えてあげなアカンな」
まぁ、そもそも近くに住んでいるのだから知っているか、と北はAにもこの事実を伝えたいと思っていることに気付くこと無くビニールから食材を取り出す。買い置きの分はそれぞれタッパーやら圧縮袋に入れて保存する。全ては祖母から教わったことだ。
「今日は多めに米炊いとくか」
全く使われていなさそうなお飾り状態の炊飯ジャーに米を仕込み、スイッチを押す。彼女の昨日の食いっぷりからして、今日は好物を作るのだから余計に食べるだろうということを見越してのことだ。
北は慣れた手つきで野菜を切ったり、炒めたり。そうこうしているうちに、外は暗くなりすっかり晩御飯の時間になる。
それでも、この家の主が帰ってくる素振りはない。
「ホンマ、どんだけ仕事やんねん」
北は素直な気持ちでそう吐き出す。呆れ半分、同情その他諸々の感情が半分。あの彼女の様子を見るに睡眠時間は短い上に過剰なストレスを抱えているように見えた。
そうでも無ければ、あんな歳で家政婦を雇おうなど思わない。家事が、自分の生活が完全に後回しになってしまっている。
頑張らないといけない、それはそうかもしれないが……。北は何とも言えない感情に苛まれる。こういうのは、なんと言ったら良いんだろうか。なんと言うか彼女は――
「多分、生きんのがヘタクソなんやろな」
そんな結論に至った北が結局彼女の帰宅を迎えたのは夜の十時半のことだった。昨日よりは早いとは言え、年頃の女子がこんな夜遅くに一人で帰宅するのは頂けない。
「ただいま」
「おかえりなさい」
やっぱりヘタや。ボロボロの負傷兵のような彼女の姿を見て、北は心の中で自分の結論に納得すると食事の準備をする。
しかし、"飯"という単語を聞いて嬉しそうに目を輝かせた彼女は一瞬だけ年相応の女子に見えて北は驚いた。
こんな可愛らしい表情も出来るのか、と。そしてそれをまた見たいと思う自分がいる。
「ホンマ謎の多い人や」
「何がですか?」
「いや――」
北はにこっ、と笑うとAの前に愛情込めて作った食事を並べる。さぁ、これを食べて思う存分疲れを取ればいい。そしてもう一度、さっきの顔を自分に見せてくれ。
そんな純な下心も漂わせながら――
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赤羽 - 好きです。最高 (4月12日 23時) (
レス) @page45 id: b22b7ccd76 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 今まで読んだ作品のなかで一番の作品でした！完結まで書いてくださり、ありがとうございました！ (12月17日 18時) (レス) @page45 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
rin - めっちゃ好きです (9月12日 21時) (レス) @page45 id: 452f9d3433 (このIDを非表示/違反報告)
朝ごはん(プロフ) - 最高です。 (2022年1月10日 1時) (レス) @page45 id: 9242d0adf9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 素敵なお話で、一気に読んでしまいました！心が温まりました。 (2020年11月5日 21時) (レス) id: 92da2ec8b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴいち | 作成日時：2020年2月10日 23時
