謎の家主 ページ11
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洗濯を干しながら、北はふとこの家の家主のことを考えた。明らかに自分と同じ歳の頃の女子、しかしその顔は疲弊に満ちていて今にもぽっくり死んでしまいそうだった。
あれが俗に言う社畜というものだろうか。北は不健康を物語っていたゴミが無くなった部屋を見回してから洗濯カゴを部屋の中へ入れる。
そういえば――――
昨日は野菜炒めなんかを作ったが、彼女の好きな食べ物は何だろうか。どうせ夕飯を作るのなら、疲れた彼女が好きなものを作ってやりたいと思ったのだが。
「昨日連絡先は教えてもろたけど、既読付くやろか」
北は一か八か、Aに"好きな食べ物は何ですか"というメッセージを送る。もし夕飯前に連絡が来たらそれを作ろう。そう思いながら割烹着のポケットに携帯を入れる。
掃除、洗濯、買い物、料理、その他諸々。家政夫の仕事というのは増えることはあっても減ることは基本的にはない。しかし、世話焼きの北はそんな仕事にもやり甲斐を感じている。
Aとは、真逆のような人間だった。
「お、連絡来た」
ヴー、と震える携帯を取り出せばやはりAからの通知。仕事を邪魔しただろうか、と一瞬心配になったがキチンと答えてくれるAを北は律儀だなと思った。
メッセージは実に端的。到底女子とのメッセージ画面とは思えなかったが、北にとってはそんな真面目そうな所に好感が持てた。
「―――ふふ、案外子供っぽいんやな。そんならはよ買い出し行かな」
北は割烹着を脱ぐと近くにあったトートバッグと財布を手にAの家を出る。今晩作るものは既に決まっていた。Aの家の周辺には店があまりないので、駅近くのスーパーまで足を運ぶことになる。
しかし、ここらの地形を未だ把握していない北にとっては新たな土地を開拓するチャンスだ。
「夕方の安売りセールに間に合うやろか……おばちゃんたちに負けんようにせんとな」
北は一人気合いを入れると、空を仰いだ。今頃あの子は自分の知らぬ職場で頑張っているのだろうか。無理をしすぎていないだろうか。
まだ会って二日目、それもそれ程会話を交わした訳ではないのだが。北は既に彼女をどこか放っておけない不思議な存在だと理解していた。
眠いのに挨拶はキチンとする。でも、転んだり寝坊したり少しおっちょこちょい。北のことをくん付けで呼ぶ度胸。
北にとってAは、未だ自分の周りには現れたことの無い、謎多き人物だったのだ。
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赤羽 - 好きです。最高 (4月12日 23時) (
レス) @page45 id: b22b7ccd76 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 今まで読んだ作品のなかで一番の作品でした！完結まで書いてくださり、ありがとうございました！ (12月17日 18時) (レス) @page45 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
rin - めっちゃ好きです (9月12日 21時) (レス) @page45 id: 452f9d3433 (このIDを非表示/違反報告)
朝ごはん(プロフ) - 最高です。 (2022年1月10日 1時) (レス) @page45 id: 9242d0adf9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 素敵なお話で、一気に読んでしまいました！心が温まりました。 (2020年11月5日 21時) (レス) id: 92da2ec8b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴいち | 作成日時：2020年2月10日 23時
