違います居候です。 その2 【ブルーロック】

24.興味 ページ5

SIDE：冴

『ブルーロックですよ、糸師冴さん』


さっきまでのおどおどした態度はどこに行ったのか疑うぐらい、挑発的な笑みを浮かべたソイツ。

少しゾッとして、それを紛らわすように会見へ目を向ける。

成る程、300人のFWを集めてラス1になるまで競い合わせるプロジェクトか。

記者からブーイングが止まらない。

当然と言えば当然。だが……


「……つまらねぇな」

『ま、普通の人の反応ですよ』


コイツも心底つまらないと言った顔をしている。


《人生が台無し……? その通りです!!日本サッカーが次に進む為には、このイカれたプロジェクトが
　必要なんです!!見てみたくないんですか? 日本サッカー界に英雄が誕生する瞬間を》


英雄、か。


『貴方のパスを受けられるFW(バカ)も生まれるかもしれませんね』


ソイツは、俺が少し前に放った言葉を文字って返してきた。


《日本サッカーはこの四半世紀で、世界から見ても驚異的なスピードで進化を重ねてきました》


《プロリーグが発足した1992年、W杯初出場を決めた1998年、日韓共催で初のW杯ベスト16まで
　勝ち上がった2002年、下馬評を覆し再びグループリーグを突破した2010年、そして優勝候補
　ベルギーを追い詰めた2018年……》

《本当に惜しかった……悔しかった……“あと1歩”で世界のトップレベルと肩を並べられた……。
　世界のサッカーファンがそう認めるほどに、日本サッカーは本当に強くなった》

《でもその”あと1歩”先へ行くために日本サッカーは今こそ死ぬべきです。だって先人たちが夢見たのは
　「W杯出場」、そして「日本サッカーが世界に通用する」と証明することだった……。いつか見た、
　私たちの夢はもう役割を終えたんです》

《なら! 今こそ日本サッカーは新しい夢を見る瞬間(とき)です!》

《ここからが日本サッカーの新しいステージです!》

《夢を失った私たち大人ではなく、まだ何者でもない彼ら300人が次の主役です！”W杯優勝”という
　新しい夢を見る勇気はありますか?》

《その全てが、“青い監獄”(ブルーロック)にある!!!!》

《会見は以上です》


『……最高だよ、アンリさん』


ソイツは、楽しさに満ちた目で笑っていた。


「糸師ちゃん、そろそろ行かないと……スペインに帰る飛行機に……」

「キャンセルだ」

「え」

「この日本(くに)どんなFW(バカ)が生まれるか、俺がこの眼で確かめてやる」


その言葉に、ソイツもまた笑っていた。


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