違います居候です。 その2 【ブルーロック】

32.どうしてそんな ページ15

SIDE：A

『夢を諦める……? どうしてそんな……』

「……怪我したこと、知ってるだろ」

『そうではなくて!!』


私は力任せに叫んだ。


『どうして夢を諦めたい人が、そんな苦しそうな顔をしてる(・・・・・・・・・・)んですか!!?』


「ッ!?」

『本当は諦めたくないくせに!!自分の気持ちを見てみぬフリして、嘘ついて!!

　私だったらそんなことしないのに(・・・・・・・・・・・・・・・)!!』


どういうことですか、なんでですか、と涙目で責め立てて＿＿＿＿＿ふと、ある言葉を思い出した。


“もしここでそいつと会っても、無理に自分の理想を押し付けないこと”


鹿児島から帰ってきた日、絵心さんに言われた言葉。


『……ごめんなさい』


小声でそう謝って、走ってその場から離れた。

暗証カードを翳(かざ)し、部屋に入ると、ベッドの上に勢いよく寝転ぶ。

自分がやってしまったことを思い出すと、自己嫌悪が止まるところを知らない。

もう1度、ちゃんと謝りたい。でも、気まずいから会いたくない。

そんな矛盾した気持ちが複雑に絡み合い、どうすることもできなくて目を閉じた。


＿＿＿＿＿

SIDE：千切


(……なんだったんだ)

本当に、そうとしか言えない。

突然姉貴に間違われ、怒鳴られ、挙句の果てには逃げられて。

(なんつー厄日だよ……)

それでも、あんな風に堂々と言える姿に、かっこよさを覚えた。

それと同時に、庇い、守ってってやりたくなるような可愛さも。

(……って、何考えてんだ俺……!!)

顔が赤いのはもう自覚済み。誰にも見られたくなくて、壁に腕をつけて顔を隠すように寄りかかる。

(“俺の気持ちなんてわからないだろ”って、言ってやるつもりだったんだけどなー……)

“なんで苦しそうなんだ”と、“私だったらそんなことはしない”と言われたときは流石に腹が立った。

でもそのあと、この世の終わりみたいな真っ青な顔で謝り、そのまま去っていったから、
そんなこと言ってやる余裕も機会もなかった。


(……そういや、名前なんて言うんだ?)


確か姉貴と友達っつってたな。ならメールで聞いてみるかとも思ったが、今はスマホ没収中。

因みに、こんなクソ気まずい中で名前を聞きに行く勇気は俺にはない。

(……そういえば姉ちゃん、借りたハンカチを代わりに返してって言ってたな)

また話す口実ができたと思いながら部屋に戻った。


＿＿＿＿＿

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