30.冬はつとめて ページ12
SIDE:A
潔さんはもっと話したそうにしていたけど、チームメイトから呼ばれてしまった。
『潔さん、今日の夜は食堂で食べるので、そのときに話しませんか? 少し遅い時間に行きますので』
「わかった。じゃあ、またあとで」
潔さんとそんな口約束を交わし、センターフィールドから去る。
今度こそ部屋で古文の続きをしようと思っていたのに、今度は絵心さんからメールが来た。
(“緊急:すぐにチームYのところへドリンクを届けること”か……って雑用かよ)
アンリさんの負担が減るなら喜んでやるけど、絵心さんはもう少しくらいは動いても良いと思う。
_____
台車を押しながら、違う棟のチームYのところに来た。
来たは良いけど、困ったことに、声をかけても誰一人として出ない。
たぶん、タイミング的にシャワー中か全員で練習と言ったところだろう。
(あー……どうしよう)
待たなきゃドリンクを渡すことはできない。置き配して気づかれなかったら嫌だしな……。
でもずっとここにいても暇なだけだ。
『……春はあけぼの……』
覚えてるだけ、枕草子を暗唱してみるという結論に至った私は、ちょっと疲れてるのかもしれない←
『……冬はつとめて。えっと……』
「雪の降りたるはいふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、
炭もて渡るもいとつきづきし」
『! そう、それだ!』
大丈夫、その後は覚えてる。
『昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も白き灰がちになりてわろし』
「お、すごい。完璧完璧」
『いやぁ、冬は途中だけ忘れちゃったし完璧では……』
……あれ??
横から聞こえてくる穏やかな声の方を向けば、見間違うはずもない三つ編みが目に入った。
そう、彼は……
『チームYの、黒名蘭世……だよね?』
「正解、正解」
黒名くんを見ている今の私は恐らく、頬は紅潮して緩み切っているだろう。
てか、2回繰り返すの可愛い。
『は、はじめまして。依天Aと言います。同い年です』
「お、そうか。それじゃあ、Aって呼んでも良いか? Aも蘭世って呼んでくれ」
確定ファンサ、頂きましたァ!!!!
黒名くん……
「運搬、運搬」
と言いながらドリンクの籠を持ってくれた。
『だ、大丈夫? 結構重いし、私が持つよ?』
「重いなら尚更、俺に運ばせてくれ」
優しッ!!
もう惚れそうになったよね。
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使い古した絡繰り人形 - はじめまして! 気付くのが遅くなってしまい、申し訳ありません・・・。もちこさん、コメントありがとうございます! これからの展開もご注目ください! これからもお楽しみに! (11月1日 16時) (レス) @page1 id: 28472857ff (このIDを非表示/違反報告)
もちこ - はじめまして! 作品を読ませてもらいましたが……とっても面白かったです!!これからも楽しみにしています。 (10月20日 18時) (レス) id: 6a0884a222 (このIDを非表示/違反報告)
使い古した絡繰り人形 - もこさん! 2度目のコメントありがとうございます! なるほど・・・確かにそれも良いですね! 色々と試行錯誤してみます! ありがとうございます! これからもお楽しみに! (10月7日 21時) (レス) @page33 id: 28472857ff (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - 出来たら落ちはなしか愛されエンドで完結したあとに他の人の落ちを書くというのはどうでしょうか?いきなりすみません。更新頑張ってください! (10月7日 20時) (レス) @page33 id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
使い古した絡繰り人形 - もこさん! コメントありがとうございます! 更新も頑張っていきます! どんどんキャラが増えていきますよ〜、これからもお楽しみに! (9月28日 21時) (レス) id: 28472857ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:使い古した絡繰り人形 | 作成日時:2023年9月18日 11時