【オリジナル】勇者ちくわぶは世界を救うのか？ (ページ8)

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なな【★】ページ8

カーディガンを羽織り、家の外へ出掛ける。いつものパン屋までトコトコと歩く。
　今日はオフだからさすがにちくわぶは持って行かない。
　さらに歩いて見えてくるパン屋の看板。
　店内に入ると美味しそうなパンの匂いがして、再びグーッとお腹が鳴る。

「いらっしゃい、ミユラアちゃん。」

　店主のおばさんに笑顔で。一応、私はここの常連だから、おばさんとは仲が良い。

「こんにちは。
　今日ってどのパンがおすすめですか？」

　幸い、昨日までの依頼のおかげでお金には余裕もある。せっかくだからいつものメロンパン以外のパンも買ってみたい。

「そうねぇ。あ、そう一昨日出した新商品が2つあるのよ。
　りんごクリームパンとあずきカレーパンなんだけど、どうかしら？」
「あ、あずきカレーパン？」

　思わず聞き返す。りんごクリームパンは美味しそうではあるけど、あずきカレーパンは想像できない。
　あずきは確か甘いし、カレーは辛いものだ。

「えぇ、案外おいしいのよ。どう、買っていく？」

　この人に優しい笑顔でそう言われたら、断りにくい。おばさんは良い人だけど、少しだけ味覚が私と違う。
　……正直、美味しく無さそうなんだけど、仕方ない。

「あ、じゃあその2つと、メロンパンお願いします。」

　そう言って300円を差し出す。

「はーい、300円丁度。
　あと、チーズパン、これはおまけね。」
「え？いいんですか？」
「いいのよ、いつも来てくれてるから。」
「ありがとうございます！」

　パンの入った袋を受け取り、上機嫌で店を出る。
　この店のせいで私はこの体型を維持している。ダイエットするなら、この店から遠く離れる必要がありそうだ。

　このとき、私はチーズパンのおまけで忘れていたのだ。
　
　あずきカレーパンの存在を。