【オリジナル】勇者ちくわぶは世界を救うのか？ (ページ4)

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さん【＊】ページ4

特に変なところがないかを確認して鏡から離れ、机の上に山積みになっている本を一瞥すると見事にタワーを築いていることにため息をつく。
　これらの本の類いは私の趣味によって進められた魔法の研究である。今は「納豆を手を使わずに完璧にかき混ぜられた状態にする」という魔法を研究中だが、どんなに資料を漁っても事例がなく半ば諦めかけているところだ。
「中々進まないしそろそろこの研究も打ち切ってしまおうかな……」
　黄緑色の付箋のページを開くとそこにはどのようにすればいいのかという予想や結果が何通りもびっしりとノートに書かれていた。
　改良に改良をしてはいるのだが未だにこの魔法を実現させるのには程遠い。
　魔法使いというと不思議な力を使い華やかな魔法で人々を幸せにするというイメージがあるが、実際はこのようにひたすら地味な研究を続けている魔法使いが半数以上いるのだ。
　……私の研究の分野が人とずれているらしいことも原因だとおもうが。
　昔、同じ魔法使いの友人に「研究ノート」と題された私の研究成果を見せたことがあるがページを数ページ捲った後、友人はぶはっ、と吹き出して笑い転げたのだ。
　ちなみにその時は「おじいちゃんの髪の毛を蘇生させる魔法」を模索していた。
　私の祖父は年齢のわりには見た目が若々しく一見エネルギッシュな印象を与えられるのだが、毛根はそんなことがなかった。
　アルバムをめくっていくとアルバムのページが厚くなっていくのに反比例して、祖父の髪の毛だけがどんどん薄くなっていくのを幼いころの私は見ていられなかったのだ。

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