第五章 ページ6
「ここです1」
部下さんの一人が、ある建物の前で足を止めた。
元は大きな工場だったのだろう、所々が錆び付いている。
「ここは一つの隠れ家のようなものでしょう。
Uccidere la genteは色々なところに出没するようですから」
「なるほどなぁ」
「どうしましょうか、フィ」
「今は輝でいい。
そうだな……、俺とAに10人付け。
俺たちは強行突破を狙うから、むやみに全員やらなくてもいい。
残りは俺たちの邪魔をするやつを殲滅しながら、俺たちを追ってくれ。
転がってる人間を追っていけば道なんてわかるだろ」
オーナーの指示に「はい」と部下さんたちが返事をする。
と、そこで気になったことを俺はオーナーに聞いた。
『オーナー、輝っていうのは』
「ああ。
……馬鹿兄貴がくれた日本名だよ」
ぱぁん、と銃声が鳴る。
俺の目の前ではオーナーが、強面男の頭を打ち抜いた。
俺もライフルのトリガーを引いて、刀を振り回す男の腕を撃つ。
しつこい輩は葵さんの部下が相手をしてくれて、「先に行ってください!」と言ってくれるのだから本当に頼もしい。
「……中枢に入るぞ」
『は、はい』
呟きのようにオーナーが言うのに応えて、俺も勢いをつけて走り出す。
かつん、ととある部屋に足を踏み入れた時。
――がしゃん
機械的な音に驚いて振り返った。
見たものは、先ほどまでの部屋と部屋を遮る、くすんだ白のシャッター。
この部屋に入れたのは、俺とオーナー、ただ二人。
「いやぁ、お仲間さん連れてくるとは思って無かったからね。
折角お話しできる機会ができたっていうのに、俺の息子とその嫁さんに。
……それを邪魔されるなんて嫌だよなぁ」
オーナーが咄嗟に銃を構える。
だが、その銃は小刻みに震えている。
ごくり、唾液を飲み込む音が聞こえた。
「久しぶりだね、フィル。
父さんの顔を忘れたかい?
三年ぐらい前まで写真は送ってたと思うんだけど。
あれ、六年前だったかな?」
「……元から最低な父親だと思ってたけど、ここまでとはな」
オーナーが苦々しそうな顔をして男を睨み付ける。
「十年前だよ。
柊 裕貴」
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おむらいす星人(空弥)(プロフ) - ナッキーさん» 読んでくださる方が一人でもいらっしゃるのなら、書こうかな、とも思えるようになりました。感謝してます。非常に短い間ではありましたが、ナッキーさんのお陰で更新停止を解こうかと思ってますw長文すみません。また良ければこの作品を覗いてくださると幸いです (2019年5月13日 21時) (レス) id: 7c5acb30f8 (このIDを非表示/違反報告)
おむらいす星人(空弥)(プロフ) - ナッキーさん» 返信遅くなりましたが返させて頂きます。正直この作品は私自身も大好きだったのでそう言っていただけただけでも嬉しく思います。上の文章を書いているとき、本当に不安でしかたがなくて、この作品の需要はないものだと思うくらいにしんどかったので……→ (2019年5月13日 21時) (レス) id: 7c5acb30f8 (このIDを非表示/違反報告)
おむらいす星人(空弥)(プロフ) - 碧依さん» 遅くなりましたがコメントありがとうございます!……戻ってきたい気持ちと書かない方がいい気持ちとが半分半分といった状態ですが、そう言っていただけて気持ちが楽になりました。本当にありがとうございます (2019年5月13日 21時) (レス) id: 7c5acb30f8 (このIDを非表示/違反報告)
ナッキー(プロフ) - 初めまして、私はこの作品を頭から読んでいてとても好きでした。最近だと、男主作品を読むことがかなり多くなりました。ですが、作者の執筆意欲を下げる行為に悲しくなりました。もっとこの作品を読んでいたかった私にとっては残念です。空弥さん、更新待ってますからね (2019年5月7日 5時) (レス) id: 105b0be3f0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - そうですか、残念です。平等に評価されるまで此処には戻って来なくていいと思います!空弥さんの作品大好きなので待ってますね。 (2019年4月20日 19時) (携帯から) (レス) id: fa08d6addd (このIDを非表示/違反報告)
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