第十一章 ページ12
『……大事な人なんだ、玩具とは訳が違うんだ。
人形は縫ってしまえば直る、接着剤なんかでくっ付けたら元通りだ。
でも人間はそうはいかない。
切ってしまえば修復に時間はかかるし、……最悪死んじゃうんだよ。
あんたたちみたいに死に関して麻痺しきっていたらどうにも思わないだろう。
……でも!
でも、俺は……俺は……、嫌だ、嫌なんだ。
あの人を蔑ろにするあんたが憎くて仕方がないんだ』
「お前が守ろうとしている男も、同じことをするんだぞ」と言われてしまえばどうしようもないことだ。
俺を愛おしげに撫でるその手は、俺のいないところで何人もの人をあやめたのかもしれない。
我儘だ、そうさ俺の我儘だ。
でも、俺をこの世界に放り込んだのはあの男だ。
だったら一般人が、俺が、少々口出ししたって。
あんただったら許してくれるでしょ?
ねぇ、葵さん。
『裕貴さん、お願いします。
俺、あの人に会いたい』
ぼろり、言葉と同時に涙があふれた。
我慢ならなかった。
手の甲でこぼれ落ちる涙を拭おうとて、決壊しきった涙腺はぼろぼろと滴を落とし、地面に小さな小さな水溜まりを作っていく。
俺はこんなに弱いのか。
分かっていたけれど、痛感するのが辛かった。
拳をぎゅうと握りしめる。
爪が手のひらの肉に食い込んで、かたが付きそうになった。
……それでも。
『……お願いします』
そう、繰り返して前を向いた。
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おむらいす星人(空弥)(プロフ) - ナッキーさん» 読んでくださる方が一人でもいらっしゃるのなら、書こうかな、とも思えるようになりました。感謝してます。非常に短い間ではありましたが、ナッキーさんのお陰で更新停止を解こうかと思ってますw長文すみません。また良ければこの作品を覗いてくださると幸いです (2019年5月13日 21時) (レス) id: 7c5acb30f8 (このIDを非表示/違反報告)
おむらいす星人(空弥)(プロフ) - ナッキーさん» 返信遅くなりましたが返させて頂きます。正直この作品は私自身も大好きだったのでそう言っていただけただけでも嬉しく思います。上の文章を書いているとき、本当に不安でしかたがなくて、この作品の需要はないものだと思うくらいにしんどかったので……→ (2019年5月13日 21時) (レス) id: 7c5acb30f8 (このIDを非表示/違反報告)
おむらいす星人(空弥)(プロフ) - 碧依さん» 遅くなりましたがコメントありがとうございます!……戻ってきたい気持ちと書かない方がいい気持ちとが半分半分といった状態ですが、そう言っていただけて気持ちが楽になりました。本当にありがとうございます (2019年5月13日 21時) (レス) id: 7c5acb30f8 (このIDを非表示/違反報告)
ナッキー(プロフ) - 初めまして、私はこの作品を頭から読んでいてとても好きでした。最近だと、男主作品を読むことがかなり多くなりました。ですが、作者の執筆意欲を下げる行為に悲しくなりました。もっとこの作品を読んでいたかった私にとっては残念です。空弥さん、更新待ってますからね (2019年5月7日 5時) (レス) id: 105b0be3f0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - そうですか、残念です。平等に評価されるまで此処には戻って来なくていいと思います!空弥さんの作品大好きなので待ってますね。 (2019年4月20日 19時) (携帯から) (レス) id: fa08d6addd (このIDを非表示/違反報告)
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