検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:6,530 hit

二幕 「月下の花」 ページ3

時は三年前に遡る。

ある日いつものように教会の扉を閉め、中に入ろうとしたときだった。


「……あの」


小さな声。

俺が振り返ると、白い布を被った人。

体型からして、その性別は男だろう。

ふと時間を置いて「ああ」と呟きに似た返事を返す。


「随分寒そうな格好だ。

貴方に服を差し上げよう。

それはさておき、本日の礼拝は生憎終わってしまったんだが……」


申し訳なさそうに言うと、青年は「ち、違います」と俯き加減だった顔を上げた。

鈴の鳴るような、美しい声。

声変わりはまだなのだろうか、そう考えていたのも一瞬。

はらりと顔を覆っていた布が落ちる。

その姿があらわになる。

その瞬間――「綺麗な男だ」と思った。

銀色の髪はわずかな月光に照らされきらきらと光り、金色の瞳は俺の視線を吸い寄せた。

彼が口を開く。


「俺をここに置いてください」


何を言っているのだろうか。

単純な言語を理解するのに、多くの時間を要した。

それを完全に理解しきった時、脳で考えるより言葉が先に口をついた。


「じゃあ、シスターとしてここにいないか」


今考えれば、実に滑稽な返答だ。

シスター?

出会ったばかりのこの男に?

女じゃないんだぞ、馬鹿なことを言うな。

だがその時は頭が上手く回らなくて、ついつい口走った台詞が自分で良く分かっていなくて。

だが、青年はその言葉に顔を輝かせたのである。


「い、いいんですか?

是非、そうさせて頂きたいです」


この青年が今のシスター、ユリーヴ。

そしてこれの二年後に、彼は俺に想いを告げられ恋人となった。

相変わらずその容貌は美しく、月下の花のように凛としている。

俺は、神父でありながら強欲にもこの男のことになると、どうもおかしくなってしまうらしく。

誰であっても、俺から彼を奪うものは容赦はしないのだ。

三幕 「たとえ」→←一幕 「その聖女、女にあらず」



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (16 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
31人がお気に入り
設定タグ:男主 , BL , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

空弥@ロザリオ(プロフ) - 大手裏剣さん» シスターってなんかえr((そういう理由で書いてるからね、これwww((((ありがとー!表現はそんな上手くないでb大手裏剣ピーヤには負けるハァト (2018年11月30日 23時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - なんかえr(( ランク入りおめと! 表現上手くて羨ましいわ。更新頑張って〜!! (2018年11月30日 22時) (レス) id: 3537ff89d0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:空弥 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年11月27日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。