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ぎゅう、と心臓が掴まれたような気がした。
この気持ちを自覚してしまったら、もう元に戻ることなど出来ないのだろう。
両思いになるということは、総一朗様の未来を潰してしまうことなのだと、充分に理解している。
「僕はもう、お前しか愛せないんだ」
途端に、視界が曇った。
総一朗の姿が、ぼんやりと霞む。
そして、あついものが頬を伝った。
どうして、今。
感情など封じ込めて、総一朗の手を振り払い、どこかに消えてしまうべきなのに。
どうして、涙が止まらない。
「須田、僕は本心を言った。次はお前の番だ」
ひどい顔だろうと思う。
色んな感情が入り混じった表情なのだろうと、思う。
でも総一朗は、決して目を逸らさない。
真正面から須田にぶつかって、返事を待ってくれている。
そんなあなたが、愛しい。
友情とも、憧れとも言えないこの思いは、今総一朗が感じている思いと一緒だ。
好きだ。好きだ。離れたくない。ずっと側にいてほしい。
「………お慕いしております…」
総一朗の顔が、見れない。
だけれど、自分を見る愛おしそうな目線だけは、感じた。
総一朗の逞しい腕が、須田を抱え、ベッドに優しく下ろす。
何だか女性扱いをされているようで、恥ずかしい。
そんなに甘やかされると、羞恥で消えてしまいたくなるから、やめてほしい。
総一朗が、低く甘い声で、自分の名を呼ぶ。
何回も何回も呼びながら、自分を愛撫する。
自分より小さかったはずの手が、須田の頬、唇、首……色んな所を、触って、自分のものだと、跡をつけていく。
優しくて、あまくて、そんな手が、愛しい。
すくって、口づけた。
そうすると、目元を緩くして、愛おしそうに笑う。
それだけで、嬉しい。
それが、嬉しい。
愛している。
愛している。
愛している。
触られるたび、もっと好きになる。
その手にしがみついて、あまえたくなる。
窓に雪が降っていた。
白く、光を宿した雪だ。
目を閉じて、束の間の幸せを噛み締めた。
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作者名:男主クリスマス合作企画 x他2人 | 作者ホームページ:http:/
作成日時:2018年11月11日 17時