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守屋が手を離して、「では帰ります」とそそくさ帰っていく。
奴の姿が見えなくなって、俺は先生の背中にしがみついた。
「どうしたの」って聞く君。
手放したくなくて、自分だけのものにしたくて。
『……ごめん。
もう少しだけ、このまま』
「いーよ」
柔らかな声に甘えるように、俺は暫くそのままでいた。
先生のコートの袖を掴んでイルミネーションの人込みから抜ける。
人気のないとある路地に入って、俺は苦笑いを先生に向けた。
『ごめん、折角提案してくれたのに』
「いや、俺もあの人込みを縫ってまでアレ見に行くのは勘弁」
うげぇ、と舌を出す先生に笑って、笑って、それから。
それから。
『……先生』
呼び方の戻った俺に、先生の視線が向く。
俺は顔を下に落とした。
『……俺は、俺は早く大人の男になりたい。
先生をちゃんとエスコートして、楽しませて、生徒と先生の関係もホントは嫌なんだ。
対等で接したいのに、俺、先生に……』
ずび、と鼻を鳴らす。
一丁前の男として意気込んで、足掻いて、それで助けてもらうなんて。
カレシ失格だ。
自分が年下だというのが憎い、非力なのが歯痒い。
ぎり、と奥歯を噛みしめたとき、俺の手に乗せられた先生の手。
「ああ、春間の手は温かくていいね。
守屋先生、凄く冷たいのに手ぇ離してくれないんだもん。
やっぱこの手、安心する。
凄く」
俺が顔をあげれば、先生と視線が絡まった。
「今日は楽しかったよ。
春間がいつもより大人っぽくて緊張したし、ドキドキした。
……何も、大人になるのを急く必要は無いよ。
置いてかれた気持ちになっちゃうし、そういう春間もひっくるめて好きなんだから、俺は」
胸が痛かった。
嫌だとか辛いとかそんなんじゃ無くて。
「幸福な痛み」。
ぎゅうぎゅう心臓が鷲�拙みにされたように苦しくて、だけどそれが心地よい。
『……好きだ』
呟きに似たその言葉に、「うん」と返す愛しい人。
生徒と先生、おまけに男同士という奇妙な恋人関係。
傍から見れば、恋というものを拗らせに拗らせた挙句の果てとして、哀れみの目で見られてしまうというのに。
でも、今はそんなことどうでもいいくらいこの人が好きで――
『先生』
ごくり、息を飲み込んだ。
先生の目をしっかりと捉えて。
逃がさない。
『俺、絶対大学入ったら先生を連れ出すから。
その時は一緒に暮らしてくれ、一生』
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作者名：男主クリスマス合作企画 x他2人 | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2018年11月11日 17時
