Sweet Christmas Day【クリスマス男主集団合作】 (ページ3)

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『先生、次はどこへ行こうか？』

手を握ってまた尋ねれば、「そう言えば」と先生は、何かを思い出したかのようにコートのポケットからスマホを取り出して、かちかちと何かを調べ始めた。

「ほら」

見せられた画像。

それはキラキラに輝くイルミネーションだった。

「駅前であるって」

『うん、じゃあ行こう』

指を絡ませるように握って引けば、先生も小さく握り返してくれた。

「……人、多いね」

ぽつ、と先生が呟いた。

その通り、辺りは人で一杯でイルミネーションどころの話では無い。

丁度電車の到着時間と被ってしまったからかもしれないが、こんなにも人って多いものなのか、と俺は眩暈を覚えそうになった。

人がぶつかってきたことで繋いでいた手が離れ、先生と離れ離れになりそうになる。

俺は咄嗟に先生のコートを掴んで、己の身を先生の方に引き寄せた。

その時だった。

「ああ、小林くんじゃないか」

ぞくり、肌が粟立った。

視線をそっちへやるとぎょろりとした瞳と目が合ってしまう。

「何だ春間。

何でお前ここに居るんだ、受験生だろ」

俺の苦手な担任、守屋だ。

担任でありながら生徒指導も受け持っていて、目ざとく違反を見付ければそいつを捕まえての長い説教が始まる。

「春間、こっちへ来い。

お前の家に報告してやる」

『や、止めてくれ、それは』

「つべこべ言うな！」

手を伸ばした守屋。

だが、その手は窘められた。

見ると、先生が守屋の手を取り、にこりと穏やかな笑みを称えている。

「守屋先生、それは誤解ですよ。

春間くんはちゃんと勉強してます」

「え？」

ぱちくり、守屋が目を瞬かせた。

その表情には困惑が滲みでている。

先生は構わず続けた。

「春間くんは生物が苦手なようで、彼から教えてほしいと頼まれていたんです。

生物は私も教えられますから、個別で勉強していたんですよ。

今は無理に詰め込むのもアレですから、息抜きにでもと。

それが勉強の妨げになるということでしたら、私の責任です」

「そ、そうでしたか！」

守屋は取り繕うように慌てて笑い出した。

先生の手を握りなおし、ぶんぶんと縦に振る。

「ご自分の仕事以外も立派になさるとは、私も見習わなくては」なんて思ってもない嘘を吐いて。

『いいから先生の手を離せ』。

気づいたらそう言いだしてしまいそうで、ごくりとそれを飲み込んだ。

それと同時に、俺のことをかばってくれた先生の存在が堪らなく愛おしかった。