第六話 ページ7
極道*
住吉 椿。
この女は、俺のかつての許嫁であり幼馴染だ。
一つ年上の椿は、俺をまるで弟のように可愛がった。
甘やかされればそれは人として嬉しいもの。
「椿ちゃん」なんて呼んで、純粋な笑顔なんて浮かべていたものだ。
……だが、それは過去の話。
「椿ちゃんはね、貴方の許嫁よ」
「……は?」
成人したその日、俺はそのことを大奥に教えられた。
今までそんなことは言われていなかったし、血気も盛んな頃だ。
親に嫁を勝手に決められるなんて、御免だった。
だから俺は、「意味が分からない!」と大奥に食って掛かった。
「椿はただの幼馴染だろ!?」
「葵、決まってることなんだから」
「今までそんなこと、俺には一言も言わなかった……!」
「そうしたら、貴方は反発するでしょう」
「嗚呼するさ」
「それじゃあだめなのよ。
組と組のつながりを強く、大事にしなきゃ。
うちは今はいいけれど、他の大手から潰されるのは嫌だもの」
大奥は口元にわざとらしい笑みを作って。
「葵。
椿ちゃんと、結婚するのよ」
所謂、「政略結婚」という奴だ。
住吉との関係を深くしたうえで、柊が潰れそうになったら守ってもらう。
大奥の言うことにも一理ある。
だけど、俺に相談も無しに話を進めたこと、俺の人生を我がものにする。
その勝手さに腹が立った。
大奥との関係が悪くなったのもこの時期からだ。
大奥は気にもしていないようだけど。
俺はことごとく住吉との婚約の話し合いをすっぽかして、今まで過ごしてきたってわけだ。
ちら、と目の前でお茶を立てる椿を見る。
長い睫毛にしっとりとした長い黒髪。
紅のさした唇も艶やかで、見た目はそう悪い女ではない。
おまけに令嬢だから教養もある。
傍から見れば、素晴らしい模範的な嫁候補。
でも、俺はやっぱりあいつがいい。
「どうぞ」
椿が、お茶をこちらに綺麗な手つきで渡してくる。
「……毒、盛ってないよな」
「盛ってない」
俺は作法に則って、お茶を口に含んだ。
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空弥(プロフ) - 木の実☆(このみ☆)さん» 椿お嬢様あああああ(便乗)彼女はホントはいい子ですはい……。ありがとうございます!三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - アカツキ@鞠さん» ありがとん(ハァト)((某は三弾書いたでb (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - シェエラさん» ありがとうございます!ウルウルしてくださったんですか!?ほわあああ、嬉しい……。三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - メロン大好き星人さん» ありがとうございます!私としても、書いてて面白い回でした。三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - 桔梗さん» ありがとうございます!こんな作品を楽しみにしてくださるなんて……、嬉しい限りです。三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空弥 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/karaichi2422/
作成日時:2018年9月24日 15時