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第三十七章 ページ40

葵さんが刀をぐ、と勢いよく引いた。

刀自身が長すぎて、直ぐにでも彼の腹を切ってしまいそうだ。

嫌だ、そう思うのに。

涙がぼろぼろと情けなく落ちていくばかりで、肝心の言葉を発することができない。

ねぇ、俺はどうしたらいい?

貴方が消えた後、どう生きればいい?


『あ、おいさん』


ひゅ、と音。

俺はぎゅ、と強く目を瞑った。






「止めなさい」


凛とした、声がした。

何があったんだろう、と恐る恐る目を開ける。

葵さんは、まだ腹に刀を突き立ててなんかいなかった。

いや、「刺すことを阻止された」というべきか。

こちらから見える葵さんは、あんぐりと口を開けていた。


「……椿」


尋問所には不釣り合いの、ピンクのゴスロリ。

ふわふわのパニエの下からのぞく足はとても細く、モデルかと思うほどスタイルもいい。

長い黒髪を靡かせたその人は、葵さんの左手首を掴んで、困ったように笑った。


「……何やってのよ、葵」

「Aを助けようとしての結果だ」

「そこは嘘でも私のためだって言ってよ」


その発言に葵さんは、む、と顔を顰める。

椿さんとは、葵さんの刀を下すように促した。


「……別に、今はあんたたちの仲を引き裂こうなんて思っちゃいないわよ。

心の整理がつくのに時間がかかっただけで」


ハッとした様に、葵さんは目を見開く。

「面白い顔してるわね」と、椿さんは葵さんの鼻を悪戯につついた。

それは、まだ年の幼い友達同士がする仕草のようで。

椿さんは、くるりとスーツの男のほうを向いて。


「住良木。

ごめんね、私のせいで迷惑かけて。

終わりにしよう、……ね」

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空弥(プロフ) - 木の実☆(このみ☆)さん» 椿お嬢様あああああ(便乗)彼女はホントはいい子ですはい……。ありがとうございます!三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - アカツキ@鞠さん» ありがとん(ハァト)((某は三弾書いたでb (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - シェエラさん» ありがとうございます!ウルウルしてくださったんですか!?ほわあああ、嬉しい……。三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - メロン大好き星人さん» ありがとうございます!私としても、書いてて面白い回でした。三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - 桔梗さん» ありがとうございます!こんな作品を楽しみにしてくださるなんて……、嬉しい限りです。三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空弥 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/karaichi2422/  
作成日時:2018年9月24日 15時

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